“コロナで解雇”は法的にアリなのか?抵抗できる場合も多い
新型コロナウイルス感染拡大の影響が深刻となり、経済に大きな打撃を与えています。政府による自粛要請が続くなか、観光業、飲食業をはじめとして多くの会社の業績が急激に悪化し、先の見通せない状況です。
そのような状況の下、従業員の雇用を維持できず、やむなく解雇に踏み切るケースも起きています。厚生労働省の調査では、観光業や宿泊業を中心に2020年1月末から3月30日までの間に、新型コロナウイルスの影響で解雇、雇い止めにあったのは全国で1021人にのぼることがわかりました。
今回は新型コロナウイルスによる業績不振を理由に解雇され、解雇の取消等をめぐって会社と争うとき、どのようなポイントに注意すべきかお話します。
新型コロナでの「整理解雇」は違法ではないが…
一般的に解雇には「普通解雇」「懲戒解雇」「整理解雇」があります。
「普通解雇」とは労働契約を続けることが困難な事情がある場合で、例として従業員の勤務成績が悪い、指揮命令に従わない、協調性に著しく欠ける、健康上の理由で十分に仕事が出来ないときなどが該当します。
「懲戒解雇」とは従業員が違法行為や非常に悪質な規律違反や行ったとき、故意または過失により会社に重大な損失を与えた場合などに、最も重い懲戒処分として行われるものです。懲戒解雇処分を受けると退職金の一部が減額される旨定めている会社もあります。
「整理解雇」とは会社の経営悪化による人員削減のために行う解雇です。新型コロナウイルス感染拡大のため業績が悪化したことによる解雇はこちらに該当します。
そもそも会社が従業員を解雇するときは、「客観的で合理的、社会通念上相当な理由が必要」(労働契約法第16条)とされています。
整理解雇の正当性は厳しく決められている
整理解雇は会社の都合によるものなので、その解雇が正当なものかどうかより厳しく判断され、具体的には次の4つの要件でその正当性が問われます。
① 経営上避けられないほどの必然性、人員を削減する必要性があること
② 解雇を回避する努力をし尽くしたこと
③ 解雇される人員の選定が合理的で公正であること
④ 労働者に対して解雇の必要性、時期、方法など説明と協議を十分行っていること
特に②については、解雇を避けるための配置転換、会社全体の賃金や残業代の削減、新規採用の停止、希望退職の募集、預貯金や借入金の状況、そして役員報酬のカット等を行っているかなどが考慮されます。解雇回避の努力をせずに、安易に解雇に踏み切ることは許されません。