ダルい仕事でも「やる気」をキープする、小さなテクニック
仕事のモチベーションを常に高く保ちたい、あるいは、後輩・部下のやる気をさらに引き出したい、とは多くのビジネスパーソンが願うところではないでしょうか。目標を掲げる、待遇を上げる、とにかく褒める。様々なやり方が巷間流布しています。
しかし、最新の科学的調査の結果では、それらとはまた少し違うアプローチでモチベーションを引き出す方法が解明されて来ているようです。著書多数のサイエンスライター鈴木祐氏の著書『科学的な適職』(クロスメディア・パブリッシング)から紹介します(以下同書より)。
一流アスリートほど大事にする唯一の習慣
オリンピックの水泳で28個のメダルを獲得したマイケル・フェルプスは、試合前にいつも同じ行動を取ることで有名でした。レースの2時間前になると必ずストレッチで全身をほぐし、それからプールで45分のウォームアップを行ったあと、今度は本番までヒップホップを聴いて過ごすのです。
コーチのボブ・ボーマンは、これらの行動について「レース前のささいな行為が勝利の感覚を与えてくれる」と表現しています。ストレッチやウォームアップなどの行動を終えるたびにフェルプスは確実な達成感を得ることができ、そのおかげで自信を持ってレースに挑めたわけです。
このような「小さな達成」の重要性は、昔からスポーツの世界ではよく知られていました。一流のアスリートほど「今週はフォームの改善を目指し、次の週は筋力アップに集中する」といったサブゴールを定め、1週間ごとに細かく達成感を積み上げていくケースが多かったからです。
近年では、科学の世界でも「小さな達成」が仕事のモベーションを大きく左右することがわかってきました。
1万2000時間かけて“やりがい”を調査
関連する研究は山のように存在しますが、一番有名なのはハーバード大学が行った調査でしょう。「仕事のモチベーションを高める最大の要素とは何か?」との疑問に答えを出すべく、研究チームは7つの会社から238人のビジネスマンを集め、全員のパフォーマンスの変動を1万2000時間にわたって記録し続けました。仕事の“やりがい”について、ここまで徹底的に調べた研究は他にありません。
その結論をひとことでまとめれば、
・人間のモチベーションがもっとも高まるのは、少しでも仕事が前に進んでいるとき
のようになります。仕事のやる気を左右する要素はいろいろあるものの、ずば抜けて影響力が大きいのは「ものごとが前に進んでいる」という感覚だったのです。