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「キットカット」が脱プラスチック包装を実現するまで。ネスレ日本に聞く

ビジネス

 国連が2015年より提げる「持続可能な開発目標(SDGs)」を受けて、環境問題に配慮したサスティナブル(持続可能)な取り組みを行う企業が増えている。

キットカット

紙包装のキットカット

 ファッションブランドのプラスチック包装の削減や、外食業界のテイクアウト用の容器をプラスチック製から紙製へ変える取り組みなどの取り組みを通じ、社会課題に向き合い、企業価値の向上を促そうとしている。

 チョコレート菓子の定番として知られる「キットカット」を販売するネスレ日本株式会社も、サスティナブルな取り組みを行う企業だ。

キットカットは日本が最も売れている市場

 スイスに本社を置く世界最大の食品会社・ネスレは、2018年の4月に「製品の包装材料を2025年までに100%リサイクル可能、あるいはリユース可能にする」というグローバルでのコミットメントを発表。プラスチックごみによる海洋汚染が原因で、魚や鳥などの野生動物が危機に瀕しているというこの現状に対し、真摯に向き合うべく、製品の包装材料をサスティナブルなものに変える方針を打ち出したのだ。

 世界190か国で事業を展開するネスレだが、ことキットカットにおいては日本市場が最も販売されている地域だという。ネスレ日本コンフェクショナリー事業本部の村田香織氏はこう語る。

「2019年9月より、コミットメントの具体的なアクションとして、主力製品であるキットカットの大袋タイプ5品の外袋を、従来のプラスチックから紙パッケージに変更しました。また、この機会に紙パッケージを使い、日本伝統の想いや願いを伝える象徴の『折り鶴』などを作り、大切な人に想いを伝える。このような新しい取り組みを開始し、楽しみながらエコを考えるきっかけづくりになればと思います」

キットカット

紙包装を折って作った折り鶴

年間380トンものプラごみ削減に

 キットカットと言えば、「キット、サクラサクよ。」をコンセプトに、受験生を応援するブランドとして定着してきた。新たな紙包装のキットカットでは、外袋を折ることで「キットカット お守り」を作ることができ、その中に個包装のキットカットを入れる仕様になっている。

キットカット

キットカットお守りのパッケージ

「国内No.1のチョコレートブランドとして、頑張る人を応援するブランドとして、消費者の皆様にとって身近な『キットカット』製品から率先して活動をすること。お客様とともに海洋プラスチックごみ問題を考えていく機会を創出していくことが大事だと考えています」

 キットカットの外袋を紙包装に変える。たったそれだけのことかと思うのかもしれないが、これで年間に約380トンのプラスチック削減を見込めるという。

「新しい紙パッケージ素材を、工場の製造ラインでどのように対応させるか。商品化するまでに何度もトライアルを重ね、設備投資と改造を繰り返した。『品質保持』や『包装材料としての強度の維持』、『食品パッケージとしての見た目』など、様々な観点から開発に向けた検証を行い、外袋の紙包装化を実現しました。今後2~3年で、個包装も紙に変えるか、海洋性分解性素材など環境負荷の少ない素材へ変更するかの計画があり、さらにサスティナブルな商品となるように尽力したい」

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