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歩行者の安全は対象外?「あおり運転」厳罰化の盲点を弁護士に聞く

暮らし

「ドラレコ」の代わりもなく…

ドラレコ

 ここ数年、ドライブレコーダーが急速な普及を見せている。「あおり運転」摘発でもこれが役立ち、相次ぐ検挙と相成った。「あおり運転」を減らした影の立役者は、このドラレコである。

 したがって、一連の報道を見て「我々歩行者だって、悪質な“あおり運転”を通報したい」と思うのも自然なことだろう。しかし、直交する自動車を手持ちのカメラで撮影しながら横断歩道をわたるというのは現実的ではない。悪質なドライバーに対し、歩行者はどう対抗したらいいのだろうか。

「事故が起きた場合、警察の捜査とは別に、自らが当事者として、現場の状況を記録し、可能ならスマホの写真を証拠として残しておくようにすべきです」(後藤弁護士)

 当然だが「事故に遭わないように気をつけるのが一番」とのこと。とはいえ、日本には狭い路側帯しかない生活道路も多く、「注意する」のにも限度がある。

8割のドライバーが法令違反

 ちなみに2019年にJAFが行った調査によると、信号機のない横断歩道で歩行者が渡ろうとしている際に、停止して道を開けるドライバーの割合はわずかに17.1%だったという(本来は必ず停止しなくてはならない)。これには、「歩行者の権利を侵害している」という意識の薄さが感じられる。

 この違反行為には「3月以下の懲役又は5万円以下の罰金が定められているが、このような罰則が科されることは現実的ではない」(後藤弁護士)そうだ。

 次なる道交法改正で「あおり運転」が厳罰化されたとしても、クルマ社会のしわ寄せが歩行者に集まるという理不尽な状況が変わる目処は立たない。自動車に怯えずに、堂々と町を歩ける日が待ち遠しいばかりである。

<取材・文/ジャンヤー宇都>

「平成時代の子ども文化」全般を愛するフリーライター。単著に『多摩あるある』と『オタサーの姫 〜オタク過密時代の植生学〜』(ともにTOブックス)ほか雑誌・MOOKなどに執筆

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