GoogleとAppleがゲームに本格参入。業界の地図を変えるのか
これまでのビデオゲームは、常にハードウェア性能による制約に悩まされてきた。Atariやファミコンの時代はもちろんそうだし、現代のSwitchやプレイステーション4にしたって、陳腐化する日は必ず訪れる。ゲーミングPCの場合、パーツの組み換えなどで割と融通が利くものの、やはり永遠に“最新型”ではいられない。
そんななか、世界企業「GAFA」に数えられるGoogleとAppleが、それぞれ別のアプローチで、ゲーム業界の地図を変えようと目論んでいる。それが「Google Stadia」と「Apple Arcade」であり、奇しくも両者ともに2019年秋にサービスを開始した。
Google Stadiaの明白な弱点
「Google Stadia」は、「クラウドゲーミング」を標榜するゲーム配信サービス。12月3日現在、計31タイトルをサブスクリプション形式でプレイすることができる(ただし日本には未対応)。なお、Chromeブラウザが動作するコンピュータなら、機種を問わずに遊ぶことが可能である。
Stadiaでは、ゲームに必要な難しい演算は家庭のコンピュータではなく、Googleの運営するサーバーがすべて担う。したがって、プレイヤーの端末に与えられる役割は「入力」と「映像の表示」だけだ。着想としては、昨今の国会討論でも話題になっている「シンクライアント方式」に近い。
そのため、ネットワーク速度さえ出ていれば、「Chromecast」や「Chromebook」といった安価なコンピュータでもグラフィックに凝ったゲームを遊ぶことができる。これは確かに強みなのだが、入出力はすべてインターネット経由で行われるため、どうしてもラグが大きくなるという欠点がある。
しかもStadiaの配信作には、0.1秒の遅延が命取りになるようなアクションゲームやFPS(本人視点シューティングゲーム)が多い。すでにStadiaでゲームを遊んでいる英語圏のユーザーは「super laggy」「too laggy」(ともにラグがヒドいといった意味)と怒っているが、これも仕方ないところだ。
日本メーカーも期待をかけるStadia
もしも設備投資や技術開発が進み、Stadiaがラグなく遊べるようになったならば、最新ゲームを遊ぶために高価なゲーミングPCをあつらえる必要はなくなる。Googleの狙いはおそらく、現在もっぱらスマホアプリでゲームを遊んでいる層を取り込むことだろう。
「どうせ洋ゲーばかりでは」と思いきや、日本メーカーのタイトルも配信されている。『ファイナルファンタジーXV』(スクウェアエニックス)や『進撃の巨人2』(コーエーテクモ)、『ドラゴンボール ゼノバース2』(バンダイナムコ)がローンチタイトルに選ばれており、今後もこれらのメーカーの作品が追加されていく可能性も高い。
また、通信を用いるというと「対戦ゲームありき」の印象が強いが、農業経営を体験できる『Farming Simulator 19』のような渋い作品がラインナップされていて、1人用ゲームの充実にも希望が持てる。
ところで、端末の性能を越えたグラフィックで遊べることが「Stadia」の最大の武器であることはすでに述べた。それなら『Sim City』や『Cities: Skylines』のような、ゴリゴリのシミュレーションゲームをラインナップに加えておくべきだったのではないだろうか。これらは格闘ゲームやFPSとは違い、多少のラグがあっても遊べるゲームである。少々もったいないものを感じる。