台風19号で地方鉄道が被災。ローカル路線が生き残るためには
被災路線は、よほどのことでなければ復旧する
過去にも、自然災害による鉄道の影響は少なくない。2005年9月の台風14号では、宮崎県・延岡―高千穂を結んでいた高千穂鉄道が橋梁流出などの被害を受け、2008年に全線延べ50kmが廃線となった。また、2011年の東日本大震災では大船渡線(気仙沼―盛)と気仙沼線(柳津―気仙沼)が津波被害を受け、代替手段として始まったBRT(バス高速輸送システム)で復旧を終えている。
このような事例から、一部では「台風19号で被災した鉄道の中には廃線する路線もあるのでは」「バス代行に置き換わってしまうのでは」と不安視もされるが、鼠入さんは「東日本大震災以降、よほどのことでもなければ被災路線は復旧する方向になっています」と念を押す。
「バス代行に関しても、利便性が下がってしまうのではといった声もあります。しかし、BRTの復旧では運行ルートや停留場の増加などで利便性が向上されており、沿線住民にとってデメリットばかりではありません。バスの方が目的地の近くまで運んでくれる場合もありますし、効果的な復旧手段の一つです。
東日本大震災では特例法もあって事業者負担が事実上0円で三陸鉄道が復旧するといったこともありましたし、災害後の復旧支援に対する税投入が積極的になっています。また、鉄道軌道整備法が改正されたことにより、JRのような黒字事業者でも『甚大な被害を及ぼした大規模災害であること』『持続可能性のある復旧後の経営プランを地元と策定する』などの条件を満たすことで、公的支援を受けることができるようになっています。被災鉄道の復旧を後押しする流れは間違いなく生まれています」
復旧した地方鉄道が生き残るためには
復旧に前向きな潮流も見られる地方鉄道。しかし乗客が少ない地域では、すでに鉄道が通勤・通学の役割を担っていない場合もある。復旧したとしても先行きが明るいとは言い切れないのが現状だ。
被災を乗り越えた地方鉄道が生き残るためには「鉄道と地域の活性化をいかに結びつけるかどうかが大切だ」と鼠入さんは言う。
「こうした災害を契機として『鉄道を地域の軸、シンボルとして生活圏などの再構築をし、さらに観光客誘致の柱にもしたい』として積極的に取り組んでいくのであれば、鉄道単独での黒字化は難しくても地域全体にもたらすメリットは大きくなるでしょう。過疎化を食い止めることにもつながるかもしれません。
鉄道会社だけで考えるのではなく、地域があってこその鉄道です。その鉄道をどう今後のまちづくりに生かしていくのか、地域活性化に役立てていくのか。災害前に戻ることはできません。だからこうしたことを考えるきっかけにしつつ“意味のある復旧”を目指していく必要があるのではないでしょうか」
<TEXT/モチヅキサトシ>