台風19号で浸水…武蔵小杉タワマンは本当にリスクだらけなのか?
災害時に早期復旧対応というメリットも
その上で、のらえもんさんは「タワマンに限らず、戸建てには戸建てのリスクがあるので、それぞれの住居が抱える被災リスクと比較して議論すべきではないか」と付言する。
「例えば、武蔵小杉で最も被害の大きかった物件は1週間で復電しました。1週間なら、近くのホテルに宿泊するなどすれば、生活への影響も大きくはないはずです。修繕費は基本的に積立金でまかなわれますし、耐震性も十分にあるので、復旧すれば暮らし続けることができます。もちろん、かかったコストは後ほど修繕費で積み増さないといけません。
一方、戸建てが被害を受けた場合、火災保険の水災特約に加入していないと全て自分でまかなわなければならず、修繕費用・期間もかさみます。全損してしまったら2度と住めなくなるかもしれません。そういう意味では今回のタワマンの早期復旧対応は、メリットとも言えるはずです」
タワマンのように高さが60mを超える建築物は、通常の建築基準法よりも厳格な国土交通省の大臣認定を受ける必要がある。そのため免震構造や制振構造を取り入れた物件が多い。また、多くのタワマンを扱う住友不動産販売の公式HPによれば、災害が起きた時のための備蓄倉庫や簡易トイレといった防災設備を導入するマンションも増えている。
武蔵小杉と湾岸タワマンの違いは
今回被害を受けた武蔵小杉は川沿いだったが、一方で、豊洲・有明・晴海など湾岸部のタワマンの災害を心配する声も多い。しかし、これは風評被害の模様。
「湾岸部でタワマンの密集する豊洲・有明・晴海は、地盤がかさ上げされているため浸水の可能性が少ない地域です。ハザードマップを見ても明らかなのですが、今回の被害で“タワマンが水害に弱い”という、ネガティブイメージが広がっています」
今回の浸水被害とタワマンの脆弱性は、たまたま武蔵小杉の地域性が結びついただけで、他のタワマンでも同様の危険性があるという動機付けにはならない。のらえもんさんは「武蔵小杉とタワマンという、富裕層を連想するキーワードが並んだために、SNSユーザーが面白がって拡散しているのでしょう」と語る。
SNSではタワマンに対する悲観的な見方が増えつつあるが、全てが「タワマンのせい」だと、一概には言い切れないのだ。
<TEXT/モチヅキサトシ>