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33歳・元広告マンが会社を辞めて、フェスで食べていくことを決めた理由

暮らし

テクノロジーが発展しても“リアルな体験”を求める

津田昌太朗

「テクノロジーが進歩してもフェスの価値はなくならない」と話す津田さん

――フェスへ近づくために大学へ進学したとのことですが、卒業後の進路決定にもやはりフェスの影響が?

津田:そうですね。サラリーマンになったのも、そもそもは「大学時代にフェスへ行きすぎてお金がなかったから」なんですよ。広告代理店を選んだのも「何となくフェスを仕事にできるかもしれない」と思ったからで、とはいえ、自分はあくまで参加するのが好きなので、音楽業界に入ってしまうと近づき過ぎると考えたりしたこともあって。

 2009年に入社したときから、当時は「これからアイドルが来る!」みたいな流れで、そういったビジネスも少しずつ注目されていました。そんな中でずっと「次に来るのはフェスです」と主張していたんですよ。でも、組織の中では企画が必ずしも実現するわけではないので、悶々とした気持ちもありました。

――そこから現在に至り、Webメディアなどを展開する今。将来的に、活動をどのように発展させていきたいですか?

津田:これまではWebメディアを成長させてきましたが、今後は書籍などアナログなメディアにも力を入れていきたいですね。人間は不思議なもので、一定以上までいくと逆のものを求める。Webで何でもできるようになるからこそ、よりリアルな体験というか、手触りみたいなものを欲すると思うんです。

 たとえば、YouTubeでフジロックやサマーソニックがライブ配信を試みていましたが、そういった面ではアメリカのコーチェラなど、先行している海外フェスが多くあって、フェスの動画配信により翌年の動員が伸びたという結果もあるんです。

――ネットで観られるからといって、参加者が減るわけではないのですね。

津田:AIなどが進み、脳内で疑似体験できるように時代が変わったとしても、そうなれば「わざわざ足を運ぶ」という手間に価値が生まれてくるはずなので、五感で味わえるようなことを大事にしながら、フェスの素晴らしさやまだ気づいてもらえてない価値を発信していきたいです。

■ ■ ■ ■ ■

 好きなものを仕事にするとなると、ときに辛いこともあるといわれます。しかし、フェスへの愛を糧に生きる津田さんは「そろそろ飽きるかなとは思いつつ、情熱は年を重ねるごとに更新されている」と話していました。言葉では表しきれない原動力がそこにはあるようです。

<取材・文・撮影/カネコシュウヘイ>

【津田昌太朗】
日本最大級の音楽フェス情報サイト「Festival Life」主宰。2019年4月に世界中の音楽フェスをまとめた『THE WORLD FESTIVAL GUIDE』を出版。ワタナベエンターテインメント所属。instagram:@festival__junkie

フリーの取材記者。編集者、デザイナー。アイドルやエンタメ、サブカルが得意分野。現場主義。私立恵比寿中学、BABYMETAL、さくら学院、ハロプロ(アンジュルム、Juice=Juice、カンガル)が核。拙著『BABYMETAL追っかけ日記』(鉄人社)。Twitterは@sorao17

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