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大英博物館「マンガ展」はこうして実現した。性的表現も議論に

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「若い子がこんなにいるのを見たことない」

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大英博物館会場風景 ©The Trustees of the British Museum

――「自分の作品が大英博物館に展示されるなんて栄誉じゃないの?」って思ってしまいますが……。

内田:そう思っていただけるのは嬉しいですけど、博物館の者がそう言うのは奢りだと思うんですね。みんなそれぞれポリシーがありますし。でも、ニコルさんは結構押しが強いから、1回断られても引かないんです。食い下がって一生懸命手紙を書いて、会ってくれることになって、実際会って熱心に説明して「いいですよ」みたいになったり。その押しの強さも大事だと思います。

 5月の開催に向けて、3月は国立新美術館の学芸員さんと一緒に大英博物館として原画をお預かりに行きました。受け取ってみて、もうびっくりしました。息が止まるくらいすっごくキレイだし、視覚的なインパクトがものすごくて、見ているだけでもいろんなことが伝わってくるんです。作家さんのことや、ペンの動き、1枚に詰め込まれている情報の多さ。原画を見られただけでも大満足です。

――反響はいかがでしょうか。

内田:来場者数は、目標数を超えました。「若い子がこんなに大英博物館の特別展会場にいるのを見たことない」って言われます。常連とは違う人たちの興味を引いたようで、それは良かったです。

 開催直後には結構シビアな批評もありました。「ガーディアン」は辛辣な記事でしたよ。批評者はコンテンポラリーカルチャーを酷評する方らしいですし、いろんな見方があるのは当然です。みんなが100%ハッピーになれるとは思っていないですが、「マンガのようなものが、なぜ我々が芸術や歴史を学びに来る博物館に展示されているんだ」みたいな批評もあって。

 でも、その批評が出た後に、ネットですごく炎上したんです。「何言ってるんだ?」「全然分ってない」みたいな感じで。擁護するネットの書き込みもいっぱいあって、心強かったです。

 ニコルさんは「この展覧会は日本のマンガにとって、とてもいいことだ」と信じているんです。彼女は純粋に「日本のマンガをもっとイギリス人に知ってもらいたい」「マンガがもっと広がるといい」と思っているんです。この展示会の開催と成功は、彼女の功績だと思います。

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大英博物館会場風景 ©The Trustees of the British Museum

<取材・文・撮影/和久井香菜子>

ライター・編集、少女マンガレビュアー。企画・著書に『わたしたちもみんな子どもだった 戦争が日常だった私たちの体験記』(ハガツサ)、『首都圏 バリアフリーなグルメガイド』(交通新聞社)、『少女マンガで読み解く 乙女心のツボ』(カンゼン)などがある。障害があるかたを優先的に採用する「合同会社ブラインドライターズ」代表

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