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学生はTシャツ姿、採用担当は歌まで熱唱…“アウトロー”な企業説明会ルポ

学び

「得意な歌を聴いてください」企業もアウトロー

 ここまで採用担当者が自らの企業名を隠していましたが、ここからは正体を明かして、自社に関する説明を行います。

 全体としてはIT、通信インフラ業界の企業や、ベンチャー系が多い印象。「今年、初めて就活アウトロー採用に参加した」という企業もあれば、「毎年、ほとんどこの場で新卒採用しており、昨年も6、7人はここから」というところまで。なかには就活アウトロー採用を通じて入社した社員が、今回は企業側として参加してきているというケースもありました。

「僕は3週間前に入社したばかりで会社のことをよく分かっていないので、入社の時に説明されたことをそのまま言います」と、ぶっちゃけてから説明をする人、企業説明後に「私の得意な歌を聴いてください」と、聖歌のアヴェマリアを歌って終える人など、企業側も堅苦しくない空気なのは、就活アウトロー採用らしいものでした。

 また、事業の説明でも「我が社は今、スタートアップの段階で、まだ事業は軌道に乗っていません。それでも会社とサービスに魅力を感じて働いてくれる人を募集しています」と、包み隠さない説明をする企業が多かったです。

 学生に飾らないありのままを求めている企業が集まっているからこそ、企業側の説明も取り繕わず、ありのままを素直に伝えているという印象を受けました。

就活アウトロー採用の魅力とは

就活

企業の説明時間は1社あたりたったの5分。短い時間の中で参加者たちは必死にメモをとっていた

 説明会が終わった後、学生たちは、興味を持った企業の担当者のもとに行き、その場で詳細を聞いたり、名刺や連絡先を交換したりして、その後の就職活動につなげようとしています。OB訪問のアポを取ったり、また別日の説明会に参加したりするなどして、企業との距離を縮めていくようです。

 この日は、プログラム最後になるため、親しくなった参加者たちに最後の挨拶を告げて解散。筆者が知り合った参加者に後日、聞いてみたところ、熱心に就活に取り組む学生だけでなく、プログラムには参加しながらも就活をせず生活を続けたり、就活アウトロー採用とは関係なく通常の就職活動を続けたりする人がいました。

 しかし、グループのメンバーと後日打ち上げを行なったり、就活アウトロー採用のOBとして、仲間たちと次回の合宿を訪れたりするなどここで出会った仲間とは新しいコミュニティが形成されていました。取材として参加したイベントでしたが、出会った人たちは今や大切な友人たちであると感じています。

 ある企業の採用担当者から何度も聞いた「ここの参加者は内定目当てではなく、素直に自分を出してくれるから良い」というセリフがあります。まさに就活アウトロー採用というイベントは、まさに「自分を素直にさらけ出す場」です。堅苦しい面接官はもちろん、友だちや家族もいない中で、新しく作った仲間たちと会話をし、自分の本音を知れる。ある意味で、人生について向き合うことのできるイベントだった、と個人的には感じました。

<取材・文・撮影/茂木響平>

ライター・イベンター。大学のお水飲み比べサークル会長。現在、上智大学4年生。面白そうな場所に顔を出していたら、なりゆきでライターに。興味分野はネット・大学・歴史・サブカルチャーなど。Twitter:@mogilongsleeper

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