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炎上した「あいちトリエンナーレ」を見学。来場者からは「気にしてない」の声も

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あいちトリエンナーレの今

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チケットカウンターの前には展示中止を告げる案内が

 とはいえ、「表現の不自由展・その後」は、あいちトリエンナーレの一企画展に過ぎない。割かれた予算も約420万円で、総予算のごく一部だ。

「表現の不自由展・その後」が展示されていたのは名古屋市の中心部栄駅から徒歩5分ほどの場所にある「愛知芸術文化センター」だ。一時期は街宣車が並び、抗議活動を行ったといわれるが、取材日(2019年8月8日)には騒動の名残は感じられなかった。

 会場内は平日ということもあり大盛況というわけではなかったが、夏休み中の学生や仕事中に抜け出してきたと思しきサラリーマン男性、若いカップルに一眼レフを背負った高齢の男性や、子連れの家族など、男女問わずさまざまな年齢層の姿が見られた。

 展示コーナーには、ポスターにも採用されているスイス人アーティスト、ウーゴ・ロンディノーネ氏の45体のピエロ像を使ったインスタレーション作品「孤独のボキャブラリー」や、ゲームデザイナー・伊藤ガビン氏の映像作品など領域、国籍を超えたさまざまなアーティストの作品が並ぶ。

 また、2階にある大ホールでは人気ロックバンド・サカナクションによるライブイベント「暗闇 -KURA YAMI-」が開かれており、開場を待ち望むファンたちの列が出来ていた。

 来場者はじっと作品を見つめたり、手で触れてみたり、一眼レフを持ち込んで写真撮影にいそしんだり、ライブの感想を言い合っていた。体験型の展示では子供が思い思いに遊ぶ姿も見られ、一連の報道やSNSで感じる物騒な雰囲気はまるでないように感じた。

(編集部注:あいちトリエンナーレ内で撮影した写真の掲載について、同イベント実行委員会事務局へ何度も許諾を試みたが、電話は保留音が鳴り続けるだけで繋がることはなかった)

展示中止騒動。来場者はどう思う?

 ある程度落ち着きを取り戻しているようにも思えるが、来場客は「表現の不自由展・その後」に関する騒動についてどう思っているのか、鑑賞を終えた数名に聞いてみることに。

「3年に一度なのでせっかくだから子供を連れて見に来たんです。騒動のことは残念だったと思いますが特に気にはしていないですね」(30代男性)

 このような「特に意識はしていない」という意見が多く聞かれた。実際に来場してくる人の中には、騒動を特に気にしていない人も少なくないようだ。一方では厳しい意見も聞かれた。

「なんというか、迷惑ですよね。騒動になるのがわかっていたなら、なんでやめたのか。やめるくらいならやらないほうがよかったんじゃないかと思いますよ」(50代男性)

 展示中止騒動をめぐっては参加アーティスト87名(8月10日時点)や「表現の不自由展・その後」実行委員会、日本文化政策学会、美術評論家連盟など各種団体や識者が相次いで本企画に対する圧力や恫喝、脅迫行為に対して抗議するとともに、展示再開を求める旨の声明を発表、企画展再開に向けた動きもみられている。

 だが一方で、公的資金や補助金を使った事業に、特定の政治性を想起させる展示がされることに対し「政治的プロパガンダではないか」などの批判が見られたことも事実だ。

 実行委員長を務める大村知事は8月13日、自身のツイッターで検証委員会を設置、公金を使った芸術作品の展示や危機管理体制のあり方などについて、今後の芸術祭に向けて提言することを目指すことを発表した。初会合は8月16日に開催されるという。

<取材・文/bizSPA!取材班>

bizSPA!フレッシュ編集部の記者(編集者)が、20代のビジネスマン向けに、気になる世の中の本音や実情を徹底した現場取材で伝えます。

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