平均年収2000万!キーエンス元社員が明かす“徹底した社員管理”
高年収の理由は“徹底した合理主義”
――キーエンスと言えば高年収。どういった理由があるのでしょうか?
吉田:キーエンスが高収入である背景のひとつが、理論に基づいて徹底的に合理化された営業手法です。とにかく一貫して無駄がない。
具体的に言うと、まずキーエンスでは営業部の社員が働く際、外勤日と内勤日が明確に定められています。外勤日は要するに、一日中、外に出て営業をする日です。内勤日というのはアポイントメントを取ったり、顧客へのプレゼン用の資料作成を行う日になっています。移動時間をロスと考え、限りなく減らしていこうという考えです。
――徹底していますね。社員への管理体制はどのくらいの細かさなんでしょうか?
吉田:確かに、他の会社に比べればかなり細かいと思います。営業も単に「行ってきます」といってやればいいわけではないんです。
まず社内で上司にプレゼンをします。ここでは「このお客様にはこんな商品が売れるだろう」といった話だけでなく、具体的な営業手法や営業先までの移動時間など、とにかくひとつひとつに理由を求められます。それで、許可が降りて初めて営業に行くことになるんです。
――1分、1秒単位で定められたマニュアルがあるという話も聞きますが?
吉田:それは外勤時のものですね。さすがに秒単位ということはないですが……。そもそも、外勤が終わると上司に報告する必要があるんです。これだけだったら普通の企業でも同じだと思うのですが、キーエンスはここでもかなり細かい。
単に商談が決まったかどうかだけでなく、営業にかかった時間を分単位で吟味するんです。例えば事前に30分ほどで終わるとプレゼンしていたのに、40分かかればその10分を次にどう改善すればいいのか。ここまで詰めるんです。ごまかす余地もありません。
キーエンスではこういった営業活動で得られた膨大なデータをもとに、科学的にマニュアルが作られています。
労働環境は意外とホワイト?
――“40代で墓が建つ”なんて噂もありましたが、労働環境はどうでしたか?
吉田:20年くらい前までは確かにいわゆる“ブラック”だった時期があったそうです。上司や先輩の中にはその時期から務めている人もいました。
僕が入社したころにはそんなことはありませんでしたが、当時は深夜に会議が始まることもザラにあったようです。ただ、僕がいた頃もトイレに行くのも小走りで行くほど、時間を大切にする空気感はありました。
――昔と比べると、どういった面で変わったんでしょうか?
吉田:有休も普通に取れますし、休日出勤は基本的にありません。朝8時ごろから働いて、終わるのが20~21時ということが多かったです。少し長いかもしれませんが、それ以上、長く働くことは基本的にはありませんでした。
――でも、正直なところ平均勤続年数は12.4年とそれほど長くないですよね? これは何か理由があるんでしょうか。
吉田:そもそも、キーエンスの若手離職率はそれほど高くありません(離職率は5年間で2~4%の推移)。あくまで私見ですが、一昔前の激務のキーエンスを経験して離れていった年代のボリュームが大きいので、平均勤続年数が短く算出されているのではないでしょうか。