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シャープ、再建完了へ。社員が寄せた「危機当時の労働環境」

ビジネス

経営危機の中、現場社員が感じていた不安

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 シャープはこの2010年代に、経営危機、台湾企業による買収、そして経営再建と激動の数年を経てきた。では、実際に働く人たちはどのように思っているのだろうか。年間2000万人が訪れる企業の口コミ・給与明細サイト「キャリコネ」には、このような口コミが寄せらている。

 はじめに紹介するのは2014年度に退職した社員からの口コミだ。この頃には会社の経営に暗雲が立ち込めていたことがわかる。

「2012年あたりから業績不振が深刻になり、創業以来初となる希望退職を募集することになり、自分は対象ではなかったが退職を決意した。対象は40歳以上だったため、自分は自己都合で退職した。

 会社に対する希望が日に日に失われていった。それと基本給や手当など、通勤手当以外がカット、ボーナスも年間2か月分と大幅にカットされた。年収にして100万円程度ダウンする計算になり、家族も増える予定だったこともあり将来に不安を覚えた」(購買・資材/20代後半男性/正社員/年収450万円/新卒入社/3年~10年未満/投稿時に退職済み/2014年度に関する口コミ)

「入社すれば、将来は安泰」と思われていた大企業、シャープの凋落がよくわかる内容となっている。そして、同種の口コミは多額の赤字を計上し、鴻海精密工業に買収された後にも続いている。2017年度のシャープの問題点について寄せられた口コミを紹介したい。

「一言で言うと、ケチです。とにかくコストを嫌います。人的・物的投資を渋り、挽回として残業や休日出勤というのが定常化しています。残業代は出ますが、ここに関してはコスト意識がほとんど無いです。個人レベルでは、費用対効果を意識して投資をすべきだと考えている人が多いです。が、偉い人がなんと言うか次第かと思います」(テストエンジニア/30代前半男性/正社員/年収790万円/新卒入社/10年以上/投稿時に在職/2017年度に関する口コミ)

 以上の2つの口コミからもわかるように、現場の社員の間でも不満や不安は徐々に広がっていたのだろう。

シャープで働く“やりがい”とは

 一方で、シャープ社員の開発に向ける意欲やモチベーションを次の口コミから垣間見ることができる。

「業界で最先端の技術や商品に携わることができます。また、『この仕事がしたい』と希望を出せば、若い人でも異動しやすいです。課長職や部長職の方でも気さくな方が多く、真剣に仕事に取り組んで、理論的な発言であれば、役職に関係なく大抵の意見は通ります。しかし、“声が大きい偉い人”に簡単に覆されることも多いです」(テストエンジニア/30代前半男性/正社員/年収790万円/新卒入社/10年以上/投稿時に在職/2017年度に関する口コミ)

 数多くの発明で、私たちの生活を豊かにしてきたシャープの精神がここにあるのかもしれない。「徳尾錠」と「早川式繰出鉛筆」を発明したシャープの創業者・早川徳次氏は「まねされる商品をつくれ」という言葉を残している。経営再建した今、今度はどんな発明で我々を驚かせてくれるのか楽しみにしたい。

<TEXT/菅谷圭祐 データ/キャリコネ(運営:グローバルウェイ)>

大学受験情報誌、IT情報サイトなどでライター経験を積み、2018年よりフリー。最近の趣味は休日の農業、リサイクル業も兼業
Twitter:@sugaya_keisuke

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