住宅ローン「フラット35」を悪用する個人たちの“儲けの手口”
住宅ローンで借金を返済する「おまとめ」も
住宅ローンの悪用は投資目的だけに限りません。峰不二雄さんは「消費者ローンの一括返済に住宅ローンが充てられるケースも横行しているのでは」と、指摘します。
「たとえば、100万円の借金を金利15%で返済している人が、1500万円の不動産を買うとき、不動産会社は1500万円ではなく、1600万円の契約書を用意します。これを金融機関に提出して融資審査が通ったら、実際の契約書は1500万円で巻き直します。
差額の100万円で金利15%の借金を一括返済、残債はフラット35の金利1.29%で返済するので、家計はかなり楽になります。オーバーローンで不動産を購入すると手元の現金が増えるスキームです。債務者の方からするとかなり魅力的、業者に提案されたら手を出す人もいるでしょう」
現場でのARUHIの評判は「使いやすい」
フラット35の取扱いで業績を伸ばしてきたのが、国内最大手の住宅ローン専門金融機関である「ARUHI」です。峰不二雄さんはARUHIの印象を次のように語ります。
「不動産営業マンとしては圧倒的に使いやすく、普及してきた印象です。土日でも担当がつかまるのはARUHIくらいです。フットワーク軽い担当が六本木から埼玉まで飛んで来てくれます」
ARUHIでは、現時点で50件程度の不動産投資への不正利用が疑われるケースがあると公表しています。峰不二雄さんが独自にARUHI担当者にヒアリングしたところ、「過去には、オーバーローンで貸出して、キックバックをもらうなど不正に加担した担当がいたらしいという噂を聞いたことがあるが、現在は問題ないだろう」とのことです。
不正をした人は「ちゃんと住みましょう」
では、住宅ローンを不正利用した人は今後どうなるのか? 峰不二雄さんにお聞きしました。
「どのように調査するかという問題がありますが、調査の結果、不正が明らかになれば契約内容に基づいて一括返済を迫られるでしょう。物件を現金化して返済できればまだいいですが、売却価格が残債を下回ると借金だけが残り、かなり悲惨な状況です。不動産営業マンの私が言えるのは、フラット35で物件を購入したら『ちゃんと住みましょう』ということだけです。
それでも人生で、『職場の近くに引越したい』とか、『子供の学校のため』『嫁の実家の近くに』といった理由で住み替えが必要なケースも出てくると思います。正当な理由があれば、金融機関からの住宅ローンは継続されることもあります(住宅ローン控除は適用されませんが)。ちゃんとした理由があって既存借入のある住宅を賃貸に出して、新規住宅を買う場合は何の問題もありません。これからもフラット35は融資に応じてくれるでしょう」
フラット35の融資実行件数は70万件。そのうちどれだけの不正があったのか、調査の進展が待たれます。
<構成/栗林篤>
【峰不二雄ちゃん(ツーブロちゃん/@ebimank)】
会いに行ける不動産レディ。都内を中心にリテール営業を行っていたが、埼玉に飛ばされ早5年。埼玉の匂いが身体に染み付き、都内で売買する際は手形が必要