たった3年で売上10倍のバスケットリーグ。人気チームの戦略とは?
ファンファースト戦略は国外のファンも視野に
人口が減少し続ける日本においては、海外のファンを取り込むことも重要になってきている。日本プロサッカーリーグは、2000年代後半に主力選手が次々に海外に移籍してしまい、また2008年のリーマンショックの影響などもあり、入場者数が減少し、赤字のクラブが増えていた。
その対策のひとつとして、各チームは、東南アジア諸国から人気選手を呼び込んでおり、現在ではタイやベトナムなどから18人の選手が国内リーグに移籍している。インスタグラムのフォロワーは200万人とアイドル並みの人気を誇り、「タイのメッシ」の愛称で親しまれているチャナティップ・ソングラシン選手もその一人。毎試合ごとにタイからの団体ツアーが組まれるそうだ。
タイのファンを数多く獲得したことによって、タイの市場で商品を売りたい企業スポンサーも獲得できた。チャナティップ選手を獲得したコンサドーレ札幌のクラブ収入は、29.8億円と、チャナティップ選手獲得前に比べて3倍に伸びている。
海外のファンを獲得するための資金力は、新興メディアの「DAZN(ダゾーン)」を擁するパフォーム・グループの破格の放映権料が、後ろ盾になっている。パフォーム・グループは、10年にわたるJリーグ放映権を、従来の4倍近い破格の2100億円で獲得。その資金が、クラブに配分され、選手獲得の後押しに一役買っているという。
スポーツチーム×ファン×ブロックチェーン技術
プロバスケットボールチーム富山グラウジーズは、IT企業とコラボし、スポーツ特化型のファンエンゲージメントサービスを試験的に開始した。
ファンがチームや選手への有料のメッセージカードを購入し、応援メッセージを贈ることができるダイレクト課金型の活動資金援助サービスや、ブロックチェーン技術を利用した応援ポイント制度などを利用できるようにした。これにより、選手やチームの応援したい気持ちを、より手軽に表明できるようになった。
バスケットボール国内リーグ・Bリーグは、サッカーや野球に他の団体に比べて、歴史が浅く、そのためにさまざまな新しい取り組みを試せるのかもしれない。
自分のビジネスにも活かせそうとの声
「ついつい、新規の顧客獲得に躍起になってしまいがちだけれど、大事にしなくちゃいけないのはコアファンということだね」
「自分の業種にも、活かせそうな内容でした。すぐにできることは無いか考えてみる!」
SNSでは、興味深い内容、自分の仕事にも活かせそうという声が多く投稿されていた。コアファンのニーズに耳を傾けることが、新たなファンの獲得に繋がり、さらにそれがチームの運営にも良い影響を与え、ひいては、選手のパフォーマンスも向上するのだろう。
このような好循環で、企業と消費者がウィン=ウィンとなる、ビジネスモデルは、我々も見習うべきかもしれない。
<TEXT/湯浅肇>