日本で薬物をやると“一発レッドカード”。再起に向けた取り組みとは?
受刑者への就労支援を行う企業も
――他にはどのような問題が?
斉藤:社会の雰囲気として、日本は一度道を踏み外したりつまずくと大きく叩かれます。まさに“一発レッド炎上社会”です。そして、若い人に限らず、多くの人がそんな雰囲気におびえている。だからこそ、薬物依存症者への風当たりが強くなっているのではないかと感じるんです。
それに加えて、薬物を使用したレッテルが一度でも貼られてしまうと、ずっとそういう人間だと思われてしまいます。ピエール瀧さんの件にしても、メディアはセンセーショナルに取り上げるけれども、そのあとの治療法については、ほとんど報じず、炎上した後は一気に無関心になる。立ち直ってからも同じように「依存症は回復できる病気です!」と大々的に報じてほしいと思います。
――これからの日本は、薬物問題をどうしていけばいいのでしょう?
斉藤:法律の問題はすぐには変えられません。逮捕されたあと、立ち直れるような社会の在り方が必要になってくるでしょう。「スティグマ(偏見)」を取り除くための地道な啓発活動も重要です。
再犯のきっかけになる「3ない」とは?
斉藤:薬物に限らず、再犯のきっかけとして「3ない」ということが言われています。「カネなし・ヤサ(家)なし・ガラ受け(身元引受人)なし」。この3つですが、これまでは累犯者がこういった問題を解決するための情報や福祉にアクセスできませんでした。
でも、最近は株式会社ヒューマン・コメディ(代表:三宅晶子氏)のように受刑者の就労支援を行っているところも増えています。この会社は『Chance!!』という求人誌を受刑者向けに作っています。ここには、事業に協力する企業からの求人が載っていて、手紙を出せば、受刑中に一般面会で面接を受けることも可能です。
――受刑中に面接まで!
斉藤:採用されれば、寮もあるし、社長さんが身柄引受人になったうえで、まじめにやっていれば仮釈放の可能性もあります。3ないの問題が解決され、人生をやり直す土台ができる。日本はやっとこういった支援をする企業が出てきたところなんです。ただ、これはあくまでもマイノリティ側にある当事者や周囲の人間ができることであり、世間を大きく変えるためには当事者ではないマジョリティの人間の認識を変えることが必要でしょう。