就活セクハラの温床「OB訪問マッチングアプリ」。女子学生が体験したキモい手口
勘違いする男性社員を教育するのも企業の役目
こうした一部社員によるセクハラ行為は、企業のブランドイメージを激しく損なう。そのため、OB訪問時の対応マニュアルを作成するなど、対策に乗り出す企業は増えている。大手食品メーカーで採用に携わる和田理恵さん(仮名・43歳)に話を聞いた。
「OB訪問を受ける際は、どこで誰と会うかを、必ず上司と採用担当者に伝えるルールです。会う場所はできるだけ社内とし、社外で会うことになった場合は18時まで。カフェなどで会っても個室は禁止。やり取りも個人メールやLINEではなく、会社のアカウントを使うように通達しています」
こうした厳しい制限も、「企業のイメージを守るためには仕方のないことだ」と和田さんは話す。
「職場では下っ端扱いされている自分を、年の近い後輩の女のコがわざわざ訪ねてきて『先輩いろいろ教えてください!』なんて言ってくるんだから、勘違いしちゃう20代の男性社員は多いんですよ。まだ学生ノリも抜けていないので、盛り上がると『飲みに行こう』って話になりやすいんです」
まともな会社は、社員が採用の権限を持ってない
だが、女子学生のほうはそのあたりのケジメをしっかり線引きしており、OB訪問はあくまでも就職活動の一環という認識を持っているという。就職の話をしたいのに、酒席に誘われたり、SNSのアカウントを聞かれたりすれば、不愉快なのは当然だろう。
和田さん自身、学生の頃に大手広告代理店のOB訪問をした際にしつこく迫られた経験がある。だからこそ、学生たちの身になって考えたいという。
「そもそも、まともな会社は、いち社員が採用や面接通過の権限なんて持っていません。『Hさせてくれたら面接通すよ』なんて言う男のいる会社に入っても、女性は絶対に幸せになれません。女子学生はOB訪問じゃなくて、OG訪問をしてみたほうがいいかもしれません。職場で女性がどういう環境で働いているか、などの現実的な話を教えてもらえるはずです」
言わずもがな、学生がOB訪問で見るべき点は「ろくでもない社員がいないか」なのである。
― セクハラOB訪問の実態 ―
<取材・文/松嶋千春・野中ツトム(清談社) 長谷川大祐(本誌)>