ツラくても「やりがいのある仕事」なら、頑張れるのは本当か?
「ブラック企業」と「やりがい」の密接な関係
「ブラック企業に入りたくない」と、多くの人はそう思うことだろう。求職者向けの調査でも、ブラック企業は避けたいという声が多数派だし、ここ数年は売り手市場ということもあり、「働き方改革」の流れもあり、労働者の間では労働環境への関心が高まっている。
ここで一歩立ち止まって考えたい。なぜ、これだけ社会的な批判を浴びているのにもかかわらず、ブラック企業に入社する人がいるのだろうか。「求人詐欺」によって騙されて入社する人もいれば、選択肢が限られていた人もいるだろう。ただ、答えのひとつとして「楽しそうだから」「やりがいがあるから」というものがある。
世の中には「明るく楽しいブラック企業」というものが存在する。
「明るく楽しいブラック企業」とは?
経営者や社員が魅力的、人を熱くするビジョン、切磋琢磨できる仲間たち、実力主義でパフォーマンスによっては同世代を遥かに上回る年収を得ることも可能、企業と自分が一緒に成長できる……。しかも、やりがいがあり、職場も熱気に満ちている。このキーワード、フレーズだけ聞くと、さも優良企業かのように思えてしまうだろう。しかし、これこそが「明るく楽しいブラック企業」だ。
マネジメントは科学的に行われている。人がどうしてやる気になるのかを徹底的に分析し、実践している。例えば、職場には元気が出るスローガンが貼られ、受注が入るたびに社名と担当営業マンの名前が掲示される。
何か良い仕事をすると拍手が巻き起こる。表彰される機会も頻繁にある。表彰状の文面も笑って泣けるものになっているし、顧客や家族からのビデオレターが届いたりもする。飲み会も会社が公式に行うもの、社員が自発的に行うものなど、ともに頻繁に開かれ、ついつい夜中まで飲んでしまい、明日も頑張ろうという気になってしまう……。
「そんな会社、あるのか?」と思う人もいることだろう。いや、よくある。私の勤務先がそうだった…。しかも、この手のノウハウを伝授する人事コンサルティング会社まで立ち上がっていたりもする。
このように、「楽しくてやりがいのある仕事、職場(結果として働きすぎてしまう職場)」が作られてしまっている。気づけば「明るく楽しいブラック企業」に踊らされてしまうということもあるのだ。