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家業を継ぐという決断「アメリカ留学で気づいた日本の魅力」29歳屏風職人

ビジネス
飲食店屏風

水商売のお店のVIPルーム用に発注されたきらびやかな屏風

――お客さんのアイデアにより、新たな可能性にふれられるというのも伝統工芸ならではの醍醐味に思えます。一方で、文化を受け継ぐ立場として何か特別に思うことはありますか?

片岡:屏風づくりを通して、雛祭りなどの伝統的な慣習が失われつつあるという思いはわいてきます。時代が変化したといえばそれまでだけど、やはり、古くから培われたものが失われるのはもったいないですね。ただ、元からのイメージに縛られ過ぎてもいけないと感じています。

今がゼロなら上がっていくしかないという精神

片岡屏風若手

歌舞伎役者から屏風の世界へ転職したという若手の職人さん

――お仕事そのもののお話も伺いたいのですが、3代目として家業を継ぐためにさまざまな試行錯誤を重ねている今、やりがいはどんなところでしょうか?

片岡:自分の思い立ったことをすぐさま実現できるというのはやりがいを感じます。うちのお店は家族経営だし、自営業だからルールがないので、マニュアルやフォーマットを作るところからが仕事なんですよ。

 もちろんアイデアを実現する上では責任もともなうのですが、父親が元々「思いついたらまず、何でもやってみよう」という精神を持っている人だったので、その点では支えられているなと思います。

――今後、長い目で見た目標はあるのでしょうか?

片岡:同世代や年下の子たちに、日本の伝統を再認識してもらうのが自分にとっての大きな目標ですね。屏風はそのための強力な手段になりうると思うので、3代目としてきちんと認めてもらえるようにも邁進していきたいです。

 家業を守るという上では、2年前に若い子が入社したのも大きかったですね。ずっと自分が年下で生きてきた世界だったのですが、後輩ができたことで「彼らを失望させてはいけない」という思いも芽生えてきたんです。

 伝統技術は衰退しつつあるという声もありますが、今がゼロに近づいているなら上がっていくしかないので、今後も新たな可能性を見出すために取り組んでいきたいと思います。

片岡3

屏風づくりの工程を丁寧に解説してくれた片岡さん

■ ■ ■ ■ ■

 時代が移り変わる中では、つぎつぎと新たな文化が生まれるというのは世の常。一方で、古くから根付く伝統を受け継ぐというのも、必要なことなのかもしれません。屏風づくりについて笑顔で解説してくれた片岡さんでしたが、その姿勢からは、変化を受け入れるということの大切さに対する思いも感じられました。

<取材・文・写真/カネコシュウヘイ>

フリーの取材記者。編集者、デザイナー。アイドルやエンタメ、サブカルが得意分野。現場主義。私立恵比寿中学、BABYMETAL、さくら学院、ハロプロ(アンジュルム、Juice=Juice、カンガル)が核。拙著『BABYMETAL追っかけ日記』(鉄人社)。Twitterは@sorao17

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