家業を継ぐという決断「アメリカ留学で気づいた日本の魅力」29歳屏風職人
伝統を受け継ぐ一方で時代による変化があってもよい
――職人さんの世界というと、素人目には高齢の卓越した技術を持った方々が活躍しているイメージもあります。そのなかで、片岡さんは比較的お若いのかなとも思いますが、何かその点を活かして取り組んだことはあるのでしょうか?
片岡:僕が家業へ入るようになってから、ホームページをリニューアルしたんですよ。うちのお店はそもそも、雛飾りに使われる屏風を請け仕事として作るところから始まったものの、やはり屏風そのものの需要というのは年々減っている実情もあったんです。
広報を強化するためにPR動画なども作成するようなってから、個人や海外の方からの問い合わせも徐々にではありますが増えてきました。
――新たな窓口を切り開いたというわけですね。ホームページを通して、実際にどういった試みを行っているのでしょうか?
片岡:目立つところでは、浮世絵師・葛飾北斎の作品を使った「北斎屏風」のPRを今年4月から強化しました。
実は、うちのお店がある墨田区は北斎が生誕した土地だと知られているのですが、以前から商品展開をしていたものの、この機会に世界的にアピールできればと考えて特設サイトや4か国語に対応したパンフレットも制作しました。
屏風の表面はひとつの「メディア」
――今後の展開に期待したいところですね。一方で、個人の方からも何か新たな問合せはありましたか?
片岡:最近では、水商売の方から「店舗に飾れるきらびやかな屏風を作りたい」と相談を受けて、大きな屏風を製作しました。ほかにも写真家の方から個展のキャンバス代わりに「屏風を使いたい」と依頼されたものがあったり、寺社仏閣巡りが好きなお客さんからは「御朱印帳を屏風にしてくれないか」という問合せがあったりと、いろいろなアイデアをいただいています。
――屏風というと和室に置いてある厳粛なものというイメージもあったのですが、従来のイメージとは異なるアイデアも集まってきているんですね。
片岡:屏風はもともと、枕元に置いて風をさえぎったりと、庶民の生活を助ける調度品として扱われていたんですよね。ただ、構造としては和紙を張り付ける「表具」であり、そこに目を付けた人たちが、絵付けなどをして装飾品としても重宝されるようになったという背景があるといわれています。
いわば屏風の表面というのは「メディア」であり、おそらくみなさんが思うよりも自由な発想で作れるモノでもあるんですよ。ホームページを作り、個人の方から問合せが来るようになってからは、僕たちが気づけなかったアイデアをいただけるようになったし、日々変化するお題にどう答えるかを考えるのも楽しいですね。