インフルエンザ新薬を生んだシオノギ製薬、大復活までの苦しみ
医薬品以外の事業を思い切って売却
そんなシオノギ製薬を変えたのが、代表取締役社長の手代木氏です。1999年に経営企画部長に就任した時に、まず手を付けたのは、医薬品以外の事業を売却したことです。一時期は総売上が半減してしまうほどの荒療治でしたが、立て直しには必要不可欠なことだったそうです。
そして、新薬の研究を感染症などの3つに絞り込み、そこに集中して資源を投入しました。
当時のトレンドであった抗がん剤の研究チームも解体してしまったため、「会社を去ってしまう仲間も少なくなかった」と言います。手代木社長は「資源を競争力のあるところに振り分け、勝てる確率を増やす」ためだったと、番組内で語りました。
海外の製薬会社と前代未聞の交渉
2010年代にシオノギ製薬の売上を支えていたのが、高コレステロール血症治療薬「クレストール」です。年間600億円ほどのロイヤリティー収入がありましたが、特許が切れてしまうデッドラインが刻々と迫っていました。
その状況を打破するために、特許が切れてしまう前に、販売権を譲渡していたアストラゼネカ社に、ロイヤリティーを減額する代わりに、ロイヤリティーの受け取り期間を延長してもらうという前代未聞の交渉をおこないました。
そのことによって、売上の落ち方を軽減させることができ、インフルエンザ新薬「ゾフルーザ」の開発に繋げることができました。
このような、海外の大手製薬会社とも互角に渡り合う交渉力はゾフルーザの世界展開にも、一役買っています。番組内では、新薬の提携先となったスイス・ロシュ社CEOと良い雰囲気で会談を進める様子が紹介されました。
手代木マジックで難局を乗り切って
「腰は低いのに、理想は高い。すごくやり手の社長っぽい」
「すごくお客さんのことを考えている感じがする。もっと頑張ってほしい」
手代木社長の魔法のような経営手腕に、驚きの声がネット上に多く上がっていました。
その一方で、1月25日にはゾフルーザを使用した患者から、治療薬に耐性を持つ変異ウイルスが検出されたとの報道がありました。ゾフルーザは、まだ新しい薬なので、どのような影響があるのか、未知数なのは仕方ないのかもしれません。
それでも1回の服用で治療が完結できるというのは、他の薬にはない大きなメリットです。この難局もなんとか乗り切ってほしいものです。
<TEXT/湯浅肇>