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「鶏レアチャーシュー」で19人が食中毒…鶏肉の生食はなぜ危険なのか

暮らし

 愛媛県の松山市保健所は6月30日、愛媛県松山市のラーメン店「KANEOKARAMEN」の客19人が、食中毒を発症したとして3日間の営業停止処分とした。翌日にはフランチャイズ本部会社の代表がTwitterに謝罪文を投稿し、カンピロバクターを原因とする食中毒があったことを認めた。SNSでは、同店が生に近い鶏肉をチャーシューとして提供していたことが報告されていた。
 松山市では6月、他にも焼き鳥店など数軒で鶏肉による食中毒が続発した。

食中毒

※画像はイメージです(以下同じ)

 鶏肉の生食に対して以前より警鐘を鳴らしてきた、ライター/フードアクティビストの松浦達也さんの著書『教養としての「焼肉」大全』より、鶏肉の生食由来の食中毒事件が各地で後を絶たない事情について紹介する(以下、同書より抜粋)

鶏肉の生食由来の食中毒事件が各地で後を絶たない

 この数年、僕は毎年のようにカンピロバクター食中毒の原稿を書いてきた。書きたいわけではない。だが、少しの知識があれば、防ぐことができるはずの鶏肉の生食由来のカンピロバクター食中毒が毎年多数起きてしまっていることに、なんともやるせない気持ちになってしまう。牛肉由来のO157も、豚肉由来のE型肝炎も、鶏肉由来のカンピロバクターも、消費者と飲食店の意識の持ちようで防ぐことができるはずものだからだ。

 鶏肉の腸管内にはカンピロバクターという食中毒菌が存在する。それゆえ、鶏肉を生食すると下痢や腹痛、発熱などの症状を伴う食中毒を引き起こすことがある。カンピロバクター由来の食中毒はその後、ギラン・バレー症候群という難病を引き起こすリスクがあり、罹患者の15~20%が重篤化し、なかには死に至るケースもある

 しかし、このことは意外と周知が進んでいない。リスクが小さく捉えられているのか、それともギラン・バレー症候群と鶏肉の生食の関係がいまひとつ理解されていないのか……。ともあれ、いまも無邪気に鶏の生食を求める客がいて、それにうかうかと乗ってしまう店がある。

カンピロバクター食中毒を防ぐのは難しいことではない

焼肉

松浦達也『教養としての「焼肉」大全』(扶桑社)

 この数年はコロナ禍で飲食店の営業が減ったこともあって、家庭が原因施設となるアニサキスが食中毒の病因物質のトップに躍り出ているが、それ以前の病因物質の第1位はカンピロバクターの指定席だった。そしてカンピロバクター食中毒が起きる原因施設のほとんどは飲食店だったのだ

 規制がないからといって(もしかしたら規制の有無すら知らないのかもしれないが)、飲食店が生食用でもない鶏肉を不十分な加熱で提供してしまう。カンピロバクター食中毒を防ぐのは難しいことではない。一定の加熱をすればいい。東京都の実験では、生理食塩水に菌を混ぜた実験では水温65℃で30秒、60℃では1分で菌が死滅したという。

 仮に汚染された肉でも芯温をこの条件に合うよう調理すれば、食中毒を抑止することができるだろう。国のガイドラインには沿っているかはさておいたとしても、せめてこうした知見をもとに食べる人の健康を考えれば、より安全に食べられる措置を講じることができるはずだ

 本当にリスクをわかっていて出す店、求める人がどれだけいるのかはわからないが、なぜカンピロバクター食中毒はなくならないのか。これにはいくつかの誤解が働いていると考えられる。

教養としての「焼肉」大全

教養としての「焼肉」大全

最初に牛タンにレモンをかけた店は?内臓のホルモンも「放るもん」由来ではない!焼肉店のカルビやロースは、カルビやロースじゃない焼肉を愛し、焼肉に愛されたスペシャリストが徹底解説。知れば焼肉がもっと旨くなる!

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