相次ぐ“パワハラ告発”に見る、ハラスメント対策の難しさ
パワハラの事実は認定されていないものの、パワハラがあったのではないか?と感じさせる報道が相次いでいます。「木更津看護学院の大量退学問題」「くら寿司の店長が焼身自殺」……普通では考えられないようなことですが、私たちがニュースで知るきっかけは、当事者が世間にメッセージを残したからです。
共通する背景として「パワハラ疑惑」があります。本記事ではハラスメント専門家の一般社団法人日本ハラスメント協会代表理事の村嵜要が社会的弱者によるメッセージの意味と、企業や学校に残された課題である必要なハラスメント対策について解説します(以下、村嵜氏寄稿)。
木更津看護学院で大量退学
千葉県木更津市の准看護師養成専門学校「木更津看護学院」で、今年2月下旬までに1年生(現2年生)38人のうち約4割に当たる15人が自主退学する騒動がありました。自主退学した学生らは教員によるパワハラを訴えています。教員が学生に対してパワハラ発言を繰り返していた疑いがあり、県には昨年秋頃に匿名で同校の学生を名乗る人物から情報提供が寄せられていました。
県は学校に対して、状況の報告と適正な運営をするように指導しましたが、当初学校側は「パワハラの事実はない」と県に説明。しかし、騒動が大きくなったこともあってか、5月、学校は第三者による「ハラスメント調査委員会」を立ち上げました。
在籍する学生、元学生に聴き取り調査を行い、年内に報告書をまとめると発表。一方で学校の「正常化を求める会」を元学生らが立ち上げ、調査委員会の委員の開示やパワハラの事実認定などを求めていくとしています。
「くら寿司」店長の焼身自殺をめぐる報道も
今年4月、くら寿司株式会社が運営する山梨県甲府市の「無添くら寿司」に務める店長が同店の駐車場で焼身自殺する事件がありました。
『週刊文春』5/5・12号では、背景には上司のパワハラ疑惑があると報道。店長は生前に「死ぬことばかり考えて仕事してる」とTwitterにツイートしていたことや「店長は上司から日常的にパワハラを受けていた」「いつも疲れ切った様子だった」などと、現役の従業員が同誌に証言しています。
なお、くら寿司側は、一連の『週刊文春』の取材に対し、「ご指摘のようなパワハラ行為があったとの事実は確認できておりません」「事故については、業務に関連しない店長の個人的な事情」と反論。また、パワハラ疑惑の上司との関係については「当該店舗に着任して1ヶ月しかなく、そもそも『日常的』な関係性があったとの事実は確認できておりません」と答えています。