「かつや」店員も大幅な給与減…コロナで多発する「不当なシフトカット問題」と対処法
コロナ禍で新たに大きく顕在化された問題の1つは、「シフト制労働者」の不安定さです。会社の都合でシフトカットされ、突然収入が大幅に減少してしまうという問題がコロナ禍では多発したのです。「シフト制労働者」とは、1か月や半月ごとに作成される「シフト表」によって、働く時間や働く日が決まる労働者のことを言い、飲食店やスーパーのパート労働者やアルバイト労働者のほとんどがシフト制労働者です。
問題の顕在化を受け、ついに厚生労働省も動き出し、海外のシフト制労働に関する法制度の調査を行ったうえで、「いわゆる「シフト制」により就業する労働者の適切な雇用管理を行うための留意事項」を発表しました。
筆者が副委員長を務める首都圏青年ユニオンではシフト制労働者の問題についての取り組みを継続しています。労働組合や弁護士の取り組みも広がっています。ここでは、シフト制労働の問題とその対応の仕方について紹介したいと思います。
パート労働者が給与ゼロなのに正社員は…
「まいどおおきに食堂」「かっぽうぎ」「串家物語」「つるまる」などの外食チェーンを全国に展開する株式会社フジオフードシステムが運営するカフェで、Aさんは、2人の子どもを抱えながら、パート労働者として週20~25時間ほど働いていました。しかし、コロナの感染が拡大し、緊急事態宣言が出た2020年4月、働いていたカフェは閉まってしまい、一切働けなくなってしまいました。
緊急事態宣言が明けてお店が開いた後はシフトに入ることができましたが、週に1日から2日しか入れず、コロナ前と比べると大幅にシフトが減少し、収入も激減しています。コロナの前には月10万円前後を稼いでおり、この収入がなければ生活は困難でしたが、働けなくなった分について、会社からの給与の補償は一切ありません。
その一方で、会社は、パート労働者と同じように労働日・労働時間が減少していた正社員については、100%の給与の補償をしていました。生活困難を抱え、また正社員とパート労働者の扱いの不平等に憤りを感じ、Aさんは首都圏青年ユニオンの飲食業分会「飲食店ユニオン」に加入し、会社に対して減少したシフト分の給与の補償を正社員と同じように行うよう求めました。
給与の補償をしてもらえないシフト制労働者
民法や労働基準法といった法律では、労働契約で取り決められた労働時間・日に会社の都合で働けなくなった場合、会社は、減少した時間・日分の給与の補償を労働者に行わなければならないと定められています。
これは、ある意味で当然でしょう。労働者からすれば、労働契約をした時点で、そこに記載されている程度の就業を行い、その分の給与を受け取ることを期待して生活設計を行います。それを会社の都合で勝手に減らされてしまっては、労働者の生活は非常に不安定になってしまうでしょう。こうした不安定を防ぐため、法律で会社都合での労働時間・労働日の削減について給与の補償を定めているのです。
しかし、シフト制労働者の場合には、この会社の給与補償の義務が曖昧になりやすいのです。というのも、シフト制労働者の契約書には、就業時間や就業日がそもそも記載されていなかったり、記載されていても「シフトによって変動する可能性がある」と書かれており、シフト表によって労働時間や労働日をいかようにも変更できる内容になっているためです。