気を遣いすぎは逆効果?「いい人なのに嫌われる」人の特徴を読み解く
「いい人」のはずなのに、なぜか人をモヤモヤさせて嫌われてしまう人、あなたの周りにもいませんか? 反対に「いい人のつもりでいるけど、自分も嫌われているかもしれない」と不安に感じることはありませんか?
人間の生物学的な進化が心理学や社会学に与える影響について研究する「進化心理学」の専門家である石川幹人さんは、「いい人」なのに嫌われてしまう原因を進化心理学で解き明かしています。「人類が進化の過程でサルだった時代に獲得した本能」や「ヒトとして狩猟・採集をしながら集団行動を始めた時代に身につけた特性」が現代社会の仕組みや構造と、だいぶズレてきてしまっていることが原因だといいます。
著書『いい人なのに嫌われるわけ』では、17タイプの「いい人なのに嫌われる人」を紹介。その人が嫌われてしまう理由を人間の進化と絡めて説明。さらにに「そのタイプとうまく付き合うには?」「もしも自分が、そのタイプだったら?」といった項目で対処法も掲載。今回は同書より「気遣いさん」タイプを紹介します(以下、同書より編集の上抜粋)。
繊細で気が利くけど過敏すぎて面倒くさい
何週間も前に仕事の修正依頼をメールしたのに、全然返信がない。おかしいと思って電話してみると、「メールの文面から、私の仕事ぶりに対して不満を感じているのではないかと怖くなってしまい、なかなか返信ができませんでした」と言う。その間、仕事はまったく進んでおらずスケジュールはギリギリに……。
このように、周りの人の感情や機嫌を窺いすぎて迷惑をかけてしまうのが「気遣いさん」です。日本には言葉に出さずにお互いに察し合うという奥ゆかしい文化がありますが、最近ではHSP(Highly Sensitive Person)という概念や、繊細すぎる感受性を持つ人がいるという事実が、世間に少しずつ広まっています。なぜこうした人たちの存在がクローズアップされてきたのか、進化心理学の観点から探っていきましょう。
「気遣いさん」が現代で生きづらさを抱える理由
敏感で繊細な感覚はヒト特有の特徴だと思うかもしれませんが、そもそも動物というのは敏感な生き物です。猫や犬などのペットを飼っている人ならわかると思いますが、動物は小さな物音や匂いをすぐ察知して身構える動作をします。生物は環境の変化や外敵に対して機敏に反応できないと、捕食動物に食べられたり、怪我をしてしまう危険に晒されているからです。ヒトも他の動物と同様に、本来は敏感で繊細な感覚を持った生物であると考えるのが自然です。
また、狩猟・採集時代において人の表情や健康状態を察する能力は、仲間集団で生きていくには必須なスキルだったと考えられます。この時代、ヒトの寿命は今よりはるかに短く、特に乳幼児の死亡率は高いものでした。ちょっとした異変が命取りになるからこそ、人の表情や変化を敏感に察知する能力が、主に子育てを担う女性に引き継がれていったのです。
一方で、仲間集団を持つことは、身の回りの危険を減らせるということでもあります。仲間と一緒に居住地を守り、食料を安定して分配できるようになると、集団の生存率は高くなり、周囲の環境変化に常に気を配らなくてよくなります。やがて、時代とともに健康状態や医療技術が飛躍的に向上したことで、生命の危機が差し迫ったものではなくなりました。つまり、鈍感な人でも生きられる社会になったのです。
「気遣いさん」が抱える問題とは、今までは生き残るのに必要だった敏感さが、現代では逆に生きにくさに繋がってしまっていることです。