10日間飲まず食わずの失業者も…ホームレスにも広がる「貧困格差の実態」
格差社会の拡大が叫ばれる現代、貧困の波はより一層の隔たりを生んでいる。そして、その波はホームレスにも広がっていた。ホームレスとひとくくりにされがちな人々の、生活格差を取材した。
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YouTubeにも出演したホームレス歴3年半の男性
「俺、YouTubeに出てんだよ、40万回再生されてる」。世間が正月ムードに染まる頃、凍てつく寒さの中、新宿駅西口の路上に座り込んでいた男性、伊藤さん(76歳)。通行人が足早に歩く中、路上に段ボールを敷いて、足元には毛布をかけ、片手でスマホをいじっていた。
「10歳ほど歳ごまかさないと働けないよ、だからみつかる前に辞めないと……」と語る。以前は建築関係の仕事をしていたそうで、仕事を辞めてから新宿でホームレスをはじめて3年半になる。
「朝は5時頃に起きて、通路に移動する。それからずっと路上に座っている。人がひっきりなしに来るから忙しいんだよ」
収入のほとんどは通行人からの寄付で、月に数万円を稼いでいるそうだ。取材をしている間も何人もの人たちが足を止めて寄付をしており、なかには千円札を入れる人の姿もあった。コロナ前は行列に並ぶ購買の仕事の依頼もあったそうで「主に中国人から依頼されたかな、月3回、4回ほど」と言う。並ぶ時間や購入するものによってもらえる金額は変動するが、金額は1回500円から2000円ほどになるそうだ。
他の人も養えるほど収入はある
「主な使い道は食費だね、まあ食う分には困らないね。今日も差し入れもらって、弁当3個。1個は他の人にもあげたよ」。長年ホームレスをしていると顔見知りも増え、よく差し入れをもらうそうだ。炊き出しを活用するのか聞くと「1か所ぐらいしかいかないね。1週間に1回だけ」と語る。
伊藤さんのそばには、2年ほど前にたまたま新宿で知り合ったという女性のホームレスの方がおり、一緒に過ごしていた。また話を聞いている最中も時折LINEの通知音がなっていた。当然、携帯電話の通信料も支払っているそうで、「自分が食べる分だけでなく、他の人も養えるほど収入はある」という。それが本当だとしても、極寒の路上で冷めた弁当を食べる生活は、つらいだろうと思う。
施設に入らないかと時折声をかけられるそうだが、その提案は頑なに拒んでいる。そのわけは「あんなんダメだよいい加減でダメ、いい加減なところは最初から入んない。生活保護なんてのはいかさまだよ。お金出す役所のほうもいかさま。もらうほうもいかさま」と語る。
生活保護は生活を立て直すための当然の権利なのだが、当事者たちが受ける気になるような支援が必要だ。また集団生活が苦手で施設を嫌う人も多く、個室を借りられるようサポートする支援団体も出てきている。しかし、彼は「新宿はいいよ新宿は」と、そこに安住の地を見出していた。