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コロナ禍で危機の劇場を「配信で支える」。ベルリン銀熊賞受賞Pに聞く、仕事のこだわり

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 2021年12月17日からベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞した濱口竜介監督の『偶然と想像』が全国の劇場で公開されます。同作品のプロデューサーはITベンチャー企業NEOPA取締役の高田聡さん(44歳)

高田聡

高田聡さん

 濱口監督とは在籍していた東京大学の映画研究サークルで知り合った高田さんは、卒業後、IT企業のプログラマーとして就職し、「映画を作ろうとは思っていなかった」といいます。しかし、濱口監督が大きく注目されるきっかけとなった『ハッピーアワー』(‘15)からプロデューサーとして製作のサポートを始めます。

 IT企業の経営者の高田さんがなぜ映画製作に携わるようになったのでしょうか。映研時代の濱口監督とのエピソードや映画プロデューサーとなった経緯を聞いた前編に続き、今回は『偶然と想像』の見どころなどについてお話を聞きました。

黒沢清監督の『スパイの妻』への参画

――『ハッピーアワー』の製作に携わったその後も、ヴェネツィア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した黒沢清監督の『スパイの妻』(‘20)でも、プロデューサーを担当しています。

高田:『スパイの妻』では出資する側ではなく、プロデューサーの一人として出資を募る側に回りました。ここでは、先ほど話した(「前編」参照)岡本さんや『寝ても覚めても』プロデューサーだった山本晃久さん達と一緒に動いています。

『ハッピーアワー』の脚本家の1人でもある野原位さんとともに濱口さんが書いた『スパイの妻』の脚本初稿を読んだ時、端的に「面白い!」と。そして、これをきちんと映画として作ると、お金がかかりそうだということもわかりました。

 この時もやはり「映画を作ろう」という意識ではなかったです。『ハッピーアワー』の時も同じですが、自分には映画を作ることはできません。でも、この脚本の黒沢監督の映画が見たかった。そうしたらお金を集めるしかないなと。それで他のプロデューサーの方々と一緒に、試行錯誤しながら資金集めを担当しました。

映画作りに集中できる環境を

偶然と想像

『偶然と想像』©2021 NEOPA / fictive

――今回、ベルリン国際映画祭で銀熊賞を受賞した濱口監督の『偶然と想像』でもプロデューサーを担当しています。映画の世界を外から変えたいという思いはありますか。

高田:「映画業界を変えたい」というような積極的な意志は全くありません。それよりも出演者の方々やスタッフが映画作りに集中できる環境を整えることが自分の役割です。

 濱口監督は、例えばカンヌ映画祭で脚本賞を受賞した『ドライブ・マイ・カー』などの企業が出資して作る製作委員会方式だけではなく、他のやり方も試しながら映画を作りたいという思いを持っているので、今回もその場を提供できるように準備しました。

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