中国に押される日本のアニメ業界。過酷労働で人材流出が止まらない背景
コロナ下にもかかわらず『劇場版 鬼滅の刃 無限列車編』『竜とそばかすの姫』といったアニメ映画がヒットしたことは、日本のみならず世界でも大きな話題になった。今後も『ブルーサーマル』『鹿の王 ユナと約束の旅』『劇場版 ソードアート・オンライン -プログレッシブ- 星なき夜のアリア』など話題作が待機している。
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一般社団法人日本動画協会が2020年に発表した「2019年度の日本アニメ産業市場」は全体で約2兆5112億円。その中で海外市場は約1兆2010億円と、国内市場に迫る勢いだ。数年で海外市場のほうが上回るとされているが、これはあくまで動画(アニメそのもの)によるもの。
すでに海外市場がなくてはならない状況になっていることは明確である。そんな中で注目するべきは、他国のアニメ産業も勢いが年々増してきていることだ。
アニメ制作を学びに来る外国人留学生たち
日本でも話題となった『羅小黒戦記』や『白蛇:縁起』『DAHUFA 守護者と謎の豆人間』『ナタ~魔童降臨~』といった、中国製アニメの海外進出が近年目立つようになってきた。中国アニメ市場は2019年度の時点で、すでに3兆円を超えているともされ、2020年度は、さらに上回るという意見がある。しかしその一方で、市場の算出方法が不透明であり、日本市場の計算方法とは違うことから、信憑性がないのも事実だ。
数字的な問題に関しては、海外に対しての印象操作の疑いもあるため、別問題としても、アニメ市場に対しての取り組む姿勢や技術的な面では、同等レベルもしくはそれ以上になっていることは紛れもない事実。
それもあってか、低賃金の過酷労働が当たり前とされていたアニメ業界に、外国人留学生(特にアジア諸国)が日本にアニメ制作を学びに来るケースも増えているようだ。2021年2月には、外国人留学生を対象とした受験予備校の行知学園が、代々木アニメーション学院と業務提携締結を発表した。これによって、行知学園株式会社傘下の日本語学校に通学しながら、代々木アニメーションコースの両方を受講することができるようになり、2021年10月には学生を募集開始するとされている。
この提携コースの最大の特長は、日本語を基礎から学びながら、アニメやマンガといったエンタメ業界のプロを目指すプログラムとなっており、留学生をエンタメ業界への就職に導くものとされている。
外国人スタッフの名前が目立つ
特に中国は、文化強国政策として、国をあげてアニメ産業を活発化させようとしており、日本に学びに行く場合は、就職支援や補助金なども出る場合がある。また、近年の日本製アニメエンドロールを観ると、外国人スタッフの名前が目立つようになってきている。これは、他国のアニメ制作会社のスタッフの名前である。
きついイメージの強いアニメ業界に就職する日本の若い人材が少なくなってきているがゆえに、他国へのアウトソーシングが当たり前となってきていることに加え、さらに外国人留学生が日本で学び、自国のエンタメ業界で就職する。
一方で海外の制作会社によって、日本人クリエイターが引き抜かれている問題もあり、日本のアニメ制作技術やノウハウは他国にダダ漏れ状態である。この動きは2000年代頃より目立ってきているが、これは日本のアニメが国内市場だけでは難しくなってきた前触れだったといえるだろう。