「食べ残し禁止法案」が中国で可決。大食い動画の配信にも罰金が
2021年4月29日まで開催された全国人民代表大会で、食べ残しを禁止する「反食品浪費法」が可決された。今後、中国国内で注文し過ぎたお客に対して店側が食べ残した分の費用を請求できるようになる。それだけでなく、大量に注文させた場合には店側にも最高で約16万円の罰金が科せられる。
大食い動画の配信にも罰金が
最近、中国のネット上では若者が大食いをする動画が人気を集めているが、そういった動画の配信も禁止対象となり、違反した個人や団体には最高で10万元(160万円あまり)の罰金が科されるという。
経済成長を続ける中国では労働者の賃金が上昇。日本に旅行する中国人の爆買いが大きなニュースになったように、中国国内では中間層が増え、日常生活における外食需要も高まった。と同時に、レストランや大衆食堂での食べ残しが大きな社会問題となっている。
さらに大豆やトウモロコシを輸入するアメリカ合衆国との対立が長引くことも懸念されており、習近平国家主席が今回、法律でそこに歯止めを掛ける形となったのだ。
日本でも食品ロスは深刻
食品ロスは日本でも深刻な問題だ。農林水産省の調査によると、国民1人あたりの食品廃棄量において日本は英国や米国、フランス、ドイツなどに次ぐ世界ワースト6位で、アジアでは韓国や中国を上回るワースト1位。
世界の食糧廃棄事情はどうなっているのだろうか? 農林水産省の2019年の統計によれば、中国は世界最大の食糧廃棄国になっている。総量は実に1億300万トンに上り、5640万トンの米国のほぼ倍である。
ただ、国民1人あたりの廃棄量でみると欧米諸国が軒並み高く、最大のオランダはなんと222.9キロにも上る。次いでフランスが200.5キロ、英国が187キロ、米国が177.5キロ、ドイツが136キロとなる。一方、日本の廃棄量は1700万トン、1人あたり133.6キロにのぼる。ちなみに中国は1人あたり75.74キロ。日中の食品廃棄量は人口比だと先進諸国の中では特別多いわけでもないようだ。
食品廃棄の問題の裏側には、飢餓がある。国連食糧農業機関の調査では、世界で生産される食糧全体の3分の1にあたる13億トンあまりの食糧が毎年捨てられながらも、世界の9人に1人が栄養不足に陥っているという。
総人口は増加の一途を辿っており、今や80億人に迫る勢いだ。人口増加とそれにともなう食糧供給の問題は、今後ますます懸念されるはずだ。