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トランプ大統領がよく使う「Optics」ってどんな意味?

コラム

 Opticsという単語を耳にしたことがありますか? もしかすると「目の錯覚」の意味のOptical illusionや「眼鏡屋」の意味のOpticianなら馴染みがあるかもしれません。どちらの例からもわかる通り、「目」を意味する単語です。

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 さて、Opticsはここ2~3年で良く使われるようになってきた単語です。それまではそれほど日常会話で耳にする単語ではありませんでした。そもそも、「光学」の意味では一般的な単語でしたから、その分野においては決して珍しい単語ではありませんでした。しかし最近ではニュースなどでよく耳にします。

【第63回】政治家が口にする「Optics」

 日常生活で耳にする場合の多くは、「見た目」とか「世論」と言った意味で使われています。特に、アメリカのトランプ大統領やその側近に関する記事ではよく目にします。また、トランプ政権の役人もインタビューなどでよく口にしています。

 例えば、何か疑惑の出ている政府高官が I recognize the optics of this are not good. I accept the responsibility for that.と口にしたとします。訳せば、「見た目が悪いのはわかっています。それについては謝罪します」といったふうです。

 つまり、謝罪内容は見た目が悪かったことについてであって、疑惑の内容についてではありません。癒着や経費流用などで釈明をしている人の例をイメージしてみると、何となく使われ方がわかってくるのではないでしょうか。

 このようにOpticsという単語を使うのは1970年代のカーター大統領に対しても、また2010年代になってオバマ大統領に対してもあったようですが、ここ数年はテレビや新聞などで本当によく耳にします。Optics matter more than substance in deciding public opinion.「世論は中身より見た目に左右される」という発言もアメリカではあった通りです。

 また、The problems he is facing are not just optics.と言えば、「彼の抱えている問題は見た目だけではない」=「重要な問題がある」の意味になります。

Opticsと、Appearanceはどう違う?

政治家 アメリカ

※イメージです

 このように考えてみると、OpticsはAppearanceと似ている、もしくは同じではないか、と思われる方もいるでしょう。実際、これら2つは非常に似ています。訳せば「見た目」となってしまいます。

 しかし、政治家は昔からAppearanceにはとても気を使っていたでしょう。誠実なイメージが政治家には大切です。また、幼い頃に「見た目も大切ですよ」と親や先生から言われた記憶が多くの人にはあるに違いありません。これはAppearanceです。一般的に言われる「見た目」です。

 しかしOpticsと言うと、そこに少し科学的、そして戦略的な響きが入ってきます。「中身も外見も両立」はAppearance。「中身より外見」はOpticsと解説をする人もいるほどです。従って、PRや政治的な意図をもって見た目や外見を気にする行為がOpticsとなり、一般的なAppearanceよりもやや策略的な響きを持ちます。

<TEXT/木内裕也>

会議通訳者、ミシガン州立大学研究者。アメリカ大衆文化、アメリカ史の研究を行うほか、国際一流企業、各種国際会議などの通訳を行う。またプロサッカーの審判員としても活躍。著書には『同時通訳者が教える 英語雑談全技術』『耳と口が英語モードになる同時通訳者のシャドーイング』(ともにKADOKAWA)など多数。英語で仕事をする人の応援サイト「ハイキャリア」にも執筆

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