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CM連発の「メルカリ」に黄信号。好調に見えても現金流出が止まらない

ビジネス

 破竹の勢いで拡大を続けている株式会社メルカリ。しかし、財務諸表をよく観察すると“成功者”メルカリが本業では現金収入を得ることができず、負債が急増している姿が見えてきます。

メルカリ

※画像は公式サイトより

 今回は、外資系企業で企業経営、企業買収業務などに携わり、M&Aにも詳しい筆者が、株式会社メルカリの財務状況を読み解いてみたいと思います(※メルカリの事業やサービスと区別するために、会社について触れる際には“株式会社メルカリ”と記載しています)。

多額の広告宣伝費によって事業を拡大

 まずは、株式会社メルカリの成長性を確認しましょう。2018年7月~2019年6月の年間総流通総額(GMV)5307億円、年成長率43%を実現しています。「メルカリ」のサービスでは10%が手数料収入として売上高計上されるため、株式会社メルカリの年間の売上高は516億円となり、年成長率45%となります。

 株式会社メルカリの発表によると、近年では、コアユーザーである20~30代の女性の増加に加え、50代以上や男性ユーザーの急増が成長をけん引してきました。

 この事業成長の背景には、多額の広告宣伝費があります。事業立ち上げ初期の2015年7月~2016年6月には、売上高の約48%(日本国内)を、現在も売上高の約20%超(日本国内)を広告宣伝費として費やしており、これが急速な事業の拡大を押し進めています。

総流通量は拡大するも、全社営業利益率は悪化

決算 企業

※画像はイメージです

 株式会社メルカリは、国内事業について「営業利益が黒字であること」を強調しています。しかし、「メルペイ」事業や海外メルカリ事業は、事業の根幹を揺るがすような多額の赤字を計上しています。

 そのため、好調の国内事業以外の事業について、株式会社メルカリは意図的に財務状況を発表していないように思われます。赤字であるということのみを発表し、詳細な数値については、決算説明会などでも「米国事業とメルペイの赤字の内訳は?」という質問に対し、「日本のメルカリ事業以外の損益は非開示」と回答しています。

 しかし未公表ではあるものの推計は可能です。決算資料によれば、2019年7~9月の3か月間の営業損益は▲70億円(利益率▲48%)で、国内メルカリ事業、メルペイ事業、海外メルカリ事業の全社合計で大幅な赤字となっています。

 このうち、国内メルカリ事業は、21億円の黒字なので、メルペイ事業と海外事業だけで約91億円の赤字を3か月間で計上していると計算できます。株式会社メルカリ全体の昨年度1年間の売上高が516億円であることを考慮すると、どれだけ大きな赤字であるかお分かりいただけるでしょう。

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