小泉進次郎、カラッポでも人を惹きつける「話し方」の凄さ
9月11日に行われた内閣改造人事で、初入閣を果たした小泉進次郎環境大臣。国連の気候変動問題の会議や、取材の中での「迷言」がバッシングを受ける中、意外にも彼の話術を評価する人は多い。
筆者の周りにも、大学のキャリアセンターで「進次郎の演説動画を見て話し方を学べ」という指導を受けた就活生もいた。バッシングも多いなか、小泉大臣の「話し方」はなぜ一定の評価を得られるのだろうか。
元NHK BSキャスターであり、現在はWACHIKAコミュニケーションズ株式会社代表取締役として、ビジネスシーンを中心に様々な人の「話し方」の改善に取り組んできた阿隅和美氏に話を伺った。
聴衆を惹きつける「話し方」とは?
――構成やジェスチャーなど、小泉大臣の話し方のスタイルを教えてください。
阿隅和美(以下、阿隅):まずはつかみが上手であることです。ご当地の方言で挨拶をしたり、聴衆からの呼びかけに笑顔で丁寧に対応しています。また、個人的な体験談や、その場での反応をスピーチに取り入れることで聴衆の興味・関心を引き寄せています。
小泉氏の話し方における大きな特徴は、アイコンタクトの取り方です。全体をゆっくり、バランスよく目を配り、要所要所で目を止めています。 特に話の“間”でしっかり目を止めていて、聴衆に落ち着きや信頼感を与えています。
――他の政治家と比べると、どんな特徴があるでしょうか。
阿隅:一言で言えば、聴衆に対して“聴きやすい”、“分かりやすい”話し方を意識されています。一文が短く、一つひとつの言葉を明瞭に発音しています。
また、言葉と言葉の間に、比較的長い間をとり、ゆっくり話します。また、非言語発話である「え~、あの~」がなく、抑揚があります。これらの要素が小泉氏の話にリズムを生み、聴衆に聴きやすさと分かりやすさをもたらしています。
「言葉」を重視するゆえの「セクシー発言」
――「気候変動のような大きな問題は楽しくかっこよくセクシーであるべきだ」など、独特なワードチョイスは批判も多いですが、その意図は何だと考えますか。
阿隅:小泉氏の国連の環境イベントでの会見の一部分を切り取って取り上げられていますが、その会見の前に同席した(クリスティアナ・)フィゲレス国連連合枠組条約前事務局長の発言を受けての発言です。
あくまで推察ですが、街頭演説で磨いてきた瞬発力から、その場での前事務局長の発言を引用したのではないでしょうか。小泉氏のワイドショーなどで取り上げられる発言は、他者の言葉の引用部分、ご自身の体験談部分がコメントとして切り取られてしまうことが多いと思われます。
演説は、聴衆に共感させる、感じさせることが主な目的です。しかし、このような会見では、他者の発言の引用や体験談から、何が言いたいかを誰が聴いても分かるレベルで説明を添える、具体的な言葉で押さえていく話し方であると、発言の意図が正確に伝わると考えます。
――小泉大臣の「話し方」になぜ惹かれるのでしょうか?
阿隅:ご本人が「ビジョンを伝える言葉の力」という講演会で、初出馬当時、人に話を聴いてもらえない苦い思い出を糧に、政治家として生き抜くために「言葉」にこだわってきたと語っています。
前述に示した、小泉進次郎氏の話し方のスタイル、特徴は、実はスピーチの基本であり、それを確実に再現しています。一見簡単そうですが、一般の方が真似ようと思うと習慣化するまではある程度、練習が必要です。こうしたスピーチスキルが、聴き手への影響力の基にあるのではないでしょうか。