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「雑談が苦手です」20代男子の悩みに東大中退ラッパーが答える

暮らし

相手の立場になって想像すること

ダースレイダー:じゃあ、話し方てどうやって学べばいいのか? という話になってくるけど、会話自体をうまくしたいってなると、これは相手の話をよく聞くことに尽きる。僕はすごく苦手なんですけど、相手の話を聞いて、そこに自分の知っている何かワンポイントを乗っけて、「それってこういうこと?」みたいな返し方をするっていうのはテクニックとしてあるかな。

 単純に話芸が磨きたいって人であれば、落語家の話を聞いてみるとか、あるいは、字幕がついているようなアメリカのスタンドアップコメディを見て学ぶっていう方法もある。うまくやっている人の話を聞くっていうのは、それ自体が楽しいしすごく勉強になるしね。

 驚くことに、話がうまい人の話を聞いていると自分がまったく知らないジャンルのことでも、自然と興味をひかれちゃうことがあるよね。それはやっぱり、そこに何かしらの感情が込められていて、そのことをちゃんと相手に伝えたいっていう気持ちが込められてるからだと思う。

 じゃあ、どうやったら相手がこの話をわかってくれるのかっていうことを考えると、やっぱり相手の立場に立って、「この人はこういうのが好きだから、こういうふうに喋ったらこういうふうに受け取ってくれるのかな」っていうところを想像しないといけない。

 まず、スタートラインとして、自分が話したいことがあるのかどうかをよく考えてみるといいかもしれないですね。無理して何もないのにその場で笑いをとりたいっていうのは、それは「職業:お笑い芸人」の人のすることだから。逆に言うと芸人さんとして修業するっていう人は、日常会話の中で身につけていくのかもしれないね。

 アンテナを張るってことではないけど、ネットってどんな情報もあるように見えて、結局は自分の好きな情報とか、興味のある情報しか見てなかったりするから、思い入れを持って喋れるようなことが転がっているはず。だから、ネットで見たものを材料にすることはできると思う。

 でも、「こうやってフリを出してこうやってポンと落とすと笑いが起きます」っていうメソッドがないところが、会話の面白さだから、あんまりテクニックだけを形として身に付けようとすると、どうしてもぎこちなくなっちゃう。

その場のグルーヴに好きなものを乗っけてみる

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※画像はイメージです(以下、同じ)

ダースレイダー:リズム感って人によって違うから、その場で生じているグルーヴを、どうやって掴むかっていうのが大事だと思うんですよね。何にも喋んないで1時間くらい一緒にいれる人っていうのがいて、それが盛り上がってないかというと、案外それはそれで楽しかったりもする。

 それは、そういうグルーヴがそこにあるからで、そういった意味では、その場のグルーヴっていうのを自分なりに掴むっていうことから始めるのがいいかもしれないですね。さらに自分が思い入れのあるものについては、そのグルーヴに乗っけてみるっていうね。

 その場のグルーヴって人によって変わるし、せっかちな人がいる場と、あんまり集中力のない人がいる場と、すごくちゃんと話を聞いてくれる人がいる場とでは、全然リズム感は変わってくるから、基本的には一人喋りではないんであれば、相手の出してくるリズムと、自分の持ってるリズムをどう調整するかっていうことを意識すればいいと思う。

 DJ的な感覚で、曲をつないでいくみたいに。そうすれば、気づいたら気持ちいい空間になっているんじゃないかなと思う。

<構成/サジェリコフ 撮影/山口康仁>

1977年パリで⽣まれ、幼少期をロンドンで過ごす。東京⼤学に⼊学するも、ラップ活動に傾倒し中退。2010年6⽉に脳梗塞で倒れ合併症で左⽬を失明するも、現在は司会や執筆と様々な活動を続けている。

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