「絶対に儲かる」と誘われて大切な友だちと貯金を失った20代男性の失敗談
誰でも一度は、「ラクをして稼ぎたい」と思ったことや、自分が直接的に働かず稼ぐ“不労所得”といった方法に憧れたことがあるのではないでしょうか。けれど世の中、そうそう甘い話はなさそうです。
高校時代の友人が副業で儲けていた
平野信吾さん(仮名・20代)は、高校生のときに仲良くしていた男友だちのFさんから久しぶりに連絡をもらい、大盛り上がり。久しぶりに2人で飲みに行くことにしました。気さくに食事が楽しめる居酒屋を想定していた信吾さんですが、指定された場所に驚きます。
「Fは、オシャレなカフェバーのURLとグーグルマップを送ってきました。見たときは思わず驚き、『高そう』『自分とは雰囲気が違うかも』と何度も店を変更しようと思いました。でも、『せっかく選んでくれたお店だし……』と自分を諭したのです」
約束の日、久しぶりに会ったFさんは垢ぬけていて、高そうなスーツがよく似合う大人な男性になっていました。驚いた平野さんが「いまの職場、給料いいの?」と質問すると、「全然。給料だけじゃ足りないから、絶対に儲かる副業をしている」とFさん。
「そしてFは、『G(男性)という友だちは、もっと稼いでいる』と言います。GのSNSには、高級車や広々とした豪華なマンションの写真がズラリ。自然と興味がわいてきて、『こんなに儲かるなんて、どんな副業?』と前のめりに聞いていました」
酔った勢いで勧められるまま商品を購入
けれどFは、「あ、ごめん。誰にでも教えられるわけじゃないから」ともったいぶります。すると、ますます聞きたくなるというもの。お酒の力も借り、平野さんはFに頼み込んでいました。そして、そのままGが2人と合流することになります。
「いきなりの展開でしたが、Fの変貌ぶりやGの豪華で贅沢な暮らしぶりを見せつけられ、自分も仲間入りしたいと強く思ってしまったのです。紹介されたのはマルチ商法のような仕事で、任意で購入したオリジナル商品を友人や知人に勧めるという内容でした」
友人や知人が商品を購入すると、決められた手数料が平野さんに入るという仕組み。商品の購入が任意だったこともあり「始めてみたい」と気軽に返事をしたところ、Gがさっそくカバンからカタログを取り出し、商品購入の話が飛び出します。
「売れ筋だと進めてくれた商品をいくつか買おうとしたのですが、『商品の在庫は残り少ないが、足りるか?』『在庫がなくなると、注文までにかなり時間がかかる』など、こちらの不安を煽ってくるのです。酔った勢いもあって、勧められるまま商品を購入しました」
不安しかなかった平野さんですが、FもGも「信吾のために」と商品を購入する知人をたくさん紹介してくれ、どんどん稼げるようになっていきます。平野さんがもらえるのは手数料のみのため、月に数万円程度の額でしたが、それでも夢は膨み、欲も出るというもの。
「こんなに人を紹介してくれるならと、本業の給料や貯金を切り崩して商品を購入するようになりました。FやGは、『信吾、すごいよ! 上層部が噂しているよ』『信吾なら、もっと売れるんじゃない?』など、その気にさせるような言葉を連発します」
Gと連絡が取れなくなった
褒め称えてきたかと思えば、「前の生活に戻りたいのか!」と強い口調で不安を煽ってくることも。平野さんは、「いま思えば、すっかり2人のアメとムチに操られていたと思います。友だちや職場の人にも絶対に儲かると、商品を買うよう勧めていました」と話します。
「それから8カ月ほど経った頃、Fから『Gと連絡が取れない。何か聞いていないか?』と連絡が入ったのです。Gのスマホからは『使われていません』のメッセージが流れるのみ。Fを問いただすと、Gとは俺に連絡してくる半年ほど前に飲み屋で知り合ったと言います」
SNSのアカウントも削除され、マンションはもぬけの殻。事情を知った友人たちの怒りは、平野さんへと向けられました。平野さんは借金をして友だちが抱えていた在庫を買い取りましたが、ほとんどの友だちから縁を切られ、借金だけが残ってしまったのです。
「訴えることも考えましたが、お金も時間もかかりそうだし、泣き寝入りすると決めました。この体験を通じてあらためて思ったのですが、世の中、そうそう甘い話はありません。“絶対に儲かる”という話や契約書のない友だち伝いの副業には注意してほしいです」
副業をキッカケに起業する人や本業より稼ぐ人が話題となる一方、平野さんのように甘い夢を見て騙されるケースも少なくありません。詐欺の手口などを知っておくほか、被害に遭ったときは相談料不要の弁護士に連絡してみるのもひとつの手段といえそうです。
[文/山内良子]