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SNSの広告革命?クリエイターと企業をマッチングさせる「HYPE CAST AI」が急成長のワケ

ビジネス

1SEC代表取締役CEO・中村成寿氏

我々の日常に欠かせない存在となっているSNS。とりわけ有名人が投稿する食べ物や商品の写真には、広告のように感じられることがあります。その光景に、「またか」と思ってしまう人も多いのではないでしょうか。

そんな中で2024年4月にリリースされた「HYPE CAST AI(ハイプキャストエーアイ)」は、インフルエンサーやクリエイターを広告の面からサポートするサービス。リリースから約3カ月で、登録クリエイターの総フォロワー数が3,600万人を超えるというサービスの特徴や今後の展開などについて、HYPE CAST AIを運営する1SEC(ワンセック)代表取締役CEOの中村成寿氏に聞きました。

クリエイターと広告主をマッチングさせるプラットフォーム

――まず「HYPE CAST AI」とは、具体的にどのようなサービスなのでしょうか?

中村:HYPE CAST AIは、1SECとして提供している新しいサービスで、個人クリエイターと商品やサービスを効率的にマッチングさせるプラットフォームです。弊社は、個人クリエイターをテクノロジーでサポートすることをミッションとして2019年に創業しました。2020年からはファンプラットフォーム「PEEPS(ピープス)」を運営していますが、サブスクリプション型のサービスを提供し、クリエイターが自身のファンに対して多種多様なコンテンツを配信する手助けをしています。

――サブスクリプション型のファンプラットフォームというのは、どのようなものですか?

中村:オンライン上のファンクラブのようなもので、具体的には動画やブログ、限定物販、さらにオンラインイベントなどを提供しており、オンラインサロン形式で特定のスキルや知識を共有する場もあります。例えば、美容師が髪の染め方を教えたり、料理の得意な人が料理教室を開いたりしています。このように、我々はクリエイターのコミュニティを構築・運営してきました。

――そこから、新サービスの「HYPE CAST AI」につながるのですか?

中村:そうです。PEEPSでクリエイターのコミュニティを構築・運営する一方で、インフルエンサーマーケティングにおいては、エンゲージメントの不足が課題としてありました。クリエイターがSNSで商品を紹介しても、本当にそれが好きなのか、フォロワーは疑問を感じているとともに、企業側も、フォロワー数は多いけれどコアなファンはどのくらいいるのかわからないといったことが生じていました。これを解決するために、HYPE CAST AIを開始したのです。

クリエイターが本当に好きなものの広告を投稿できる

HYPE CAST AI 5つの強み

――それは理想的なサービスのように思えますが、実際どのようにクリエイターと企業をマッチングさせるのでしょうか?

中村:クリエイターの趣味や関心を100項目以上のアンケートで詳細に分析し、それをもとに広告とマッチングを行います。このプロセスには、AI技術を活用し、クリエイターと商品の適正な一致を図ります。具体的には、例えばコーヒー好きのクリエイターに、実際に本人の好きなコーヒーブランドのPRを依頼するような形です。

このアプローチにより、クリエイターが自然な形で商品を紹介できるので、フォロワーに対しても信頼性が高く、納得感のあるコンテンツが提供されます。また、クリエイター自身にもフィットした商品のみを紹介することになるため、エンゲージメント率が高くなります。これにより、フォロワーからの反応も向上し、広告主にとっても効果的なマーケティング手法となるのです。

――クリエイター、フォロワー、広告主の企業、三者ともにウィンウィンウィンの関係になれるということですね。

中村:その通りです。クリエイターには、日常的に関心を持っている領域の商品やサービスを提供し、最適なものと出合うための支援をすることで、弊社のミッションでもあるクリエイターのエンパワーメントを実現しています。

また、企業側には、サイトから明確なデータに基づいて好きなクリエイターを選定できる仕組みを通じて、より精度の高いマーケティングを実現しています。SNSフォロワー数が少ないクリエイターでも、月額課金をしているユーザーの数や収益を上げている事例がある一方で、数十万フォロワーを持つクリエイターであっても、収益が少ない人もいることから、フォロワーとクリエイターの関係性が深いほど高い効果を発揮することがわかります。

ですから、クリエイターの個々の影響力や信頼性が重要視されており、企業やブランドがこだわるべきは、そのコアなファン層をいかに引きつけ、長期的な関係を築くかという点です。

深い関係性と高い信頼性を持つクリエイターと企業のマッチングが実現できることにより、一般的な広告手法とは一線を画す、ピンポイントで効果的なマーケティングが可能となっています。

リリースから3カ月で総フォロワー数は約3,600万人

スマホを見る人

Photo : Shutterstock.com

――HYPE CAST AIは、2024年4月にリリースされたとのことですが、クリエイターや企業の数はどのくらいいるのでしょうか?

中村:すでに多くのクリエイターと広告主に利用されています。このサービスで登録可能なクリエイターのフォロワーの中央値は約3万2,500人(2024年6月時点)で、フォロワー数が100人や200人といった少数の方は登録できません。現時点で登録されているクリエイターの総フォロワー数は約3,600万人と増加傾向にあります。

――広告主はどのような業種が多いのでしょうか?

中村:化粧品、ファッション、フィットネス、ヘアサロンといったジャンルを中心に約200ブランドと取引があります。

――実際の広告は、どのような形式で作られるのですか?

中村:Instagram(インスタグラム)のリール投稿用のショート動画に限定して、クリエイター自身に動画制作を任せています。本人のクリエイティビティを活かして、よりユーザーにアピールするコンテンツを作成できるので、再生数や商品ページへの誘導率が向上しています。リールに限定しているのは、アルゴリズム的に優遇されるので露出頻度が高くなり、フォロワー以外にもリーチできるからです。また、ショート動画なので、TikTok(ティックトック)にも流用できます。

――大変好調のようですが、今後の展開はどのように考えていらっしゃいますか?

中村:現状は、マッチングだけでなく、クリエイターのアサインまで弊社で一元管理していますが、将来的には、企業が自社の商品を最適に紹介するクリエイターを自動的に見つけ出すためのAIシステムを導入し、汎用的に使えるような開発を進めています。

今後もより多くの企業とインフルエンサーが共創するプラットフォームとして進化し、クリエイターとフォロワーのつながりを大切にしながら、新たな価値を生み出すことを目指しています。より多くのクリエイターが自身の趣味や特技を活かして、広告とのマッチングを成功させることで、個人クリエイターのエンパワーメントを進めていく所存です。

[取材・文/bizSPA!フレッシュ編集部]

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