「会社辞めてぇ~」と思ったら。一流企業を早々に退社し夢をかなえた億万長者のアーリーリタイア論
給料以外の収入を確保して、会社員生活におさらばしたいと考えている若者は少なくないはずだ。
フリーランスで仕事を始めるも良し、投資による不労所得を手にするも良し。生きる手段は何であれ、会社に依存しない暮らしに憧れる若者はまず、何から始めればいいのか。
野村證券を早々にリタイアし、数々の事業を成功させ、今を幸せに生きる株式会社カイリゾート代表の三浦純健さんにライターの一ノ瀬聡子が聞いた(以下、一ノ瀬聡子の寄稿)
野村證券の会社員から学習塾と家庭教師で起業
そもそも、三浦純健さんはどのような人生を歩んできたのだろう。三浦さんは、大学卒業後、野村證券に入社し、24歳で学習塾などを起業した。言い換えれば、入社早々に会社を「リタイア」した人生になる。
学習塾の事業を一度は成功させるも会社を乗っ取りで失い、政治家を一転して志す。衆議院議員秘書になるが、議員の落選で無職に。
再び、学習塾で起業し、生徒数1,000人を超える規模に5年間で育てた。同時進行で、不動産投資、ネットビジネスなどを始め、グループの年商が40億円となる。
トラブルにはその後も見舞われたが、バリ島での不動産とホテル事業で復活して現在に至る。変化に富んだ、実に自由な生き方ではないだろうか。
しかも、野村證券と言えば、誰もが知る一流企業だ。どうして、そのような立派な会社を辞め、会社員生活に別れを告げようとしたのか。
「野村證券に入社して1年が経ったころ、自分の20年後を支店長に重ねてみました。しかし『支店長のようにはなりたくないな。こんな風になるために毎日頑張るのか』と思ったら、続けられなくなりました。
そこで、思い切って退職し、学習塾と家庭教師の事業を起こしました。生徒集めの営業活動を、チラシとホームページで行い、毎日のように徹夜して試行錯誤を繰り返しました。
もちろん、最初は楽ではなかったです。しかし、読み物として楽しめるチラシをつくった結果、反響が10倍増になり。年間2億円近い経常利益を出すまでに急成長しました」(三浦純健さん、以下、三浦)
必要なのは「勇気」だけ
とはいえ、いきなり会社を辞める決断は普通、できない。会社員時代、アーリーリタイアするためにどんな努力をしたのだろうか。
「私は、リタイア(退職)に向けて長々と準備したわけではないので努力は特にありません。強いて挙げるなら『勇気を出した』でしょうか。
当時は、いい大学から一流企業へ就職し、その会社で出世する人生が一番という時代でした。世間の考え方としては、新卒で入社した会社が一番いい会社なわけです。ですから、ずっと走ってきたレースを外れる怖さがありました。
しかし、会社員生活で歳を重ねていくだけでは後悔すると分かっていたので、その葛藤から抜け出す勇気が必要でした」(三浦)
でも、多くの場合、この勇気が持てない。勇気を持つためには、どうすればいいのだろうか。
「自分と違う生き方をしている人、会社員でない生き方をしている人との付き合いをまずはお勧めします。
会社員として生きていると、どうしたって会社文化に染まってしまいます。すると『なんだかんだ言って会社員生活が一番』となってしまうのです。
まずは、自分の生き方を俯瞰(ふかん)して見られるように異なる境遇や価値観の人と付き合ってください。
アーリーリタイアといっても、いろいろなやり方があります。いろいろな価値観の人との出会いの中で、自分に合ったやり方を見つけ、肌感覚で『どうにかなる』というメンタルを持てるといいでしょう。
その上で、生活水準を下げ、『ないなりに楽しむ』ように意識を切り替えておくと楽です。お金がないと人は不安になります。会社員を10年以上もやると、なおさら不安になります。
まず、月収20万円で満足できる人間になり、その上でお金は、なくても『どうにかなる』『食ってはいける』『死ぬことはない』というメンタルを手にしてください」(三浦)
余ったお金を「金を生む何か」に使う
心構えの部分は分かった。では、勇気を持ったら次は、具体的に何をすればいいのか。
「先ほどの話と矛盾するようですが、アーリーリタイアに必要な物はやはりお金です。先ほどは、月収20万円という金額を出しました。それを、毎月どのように得るか。
例えば、何らかのビジネスのノウハウを基に起業するとすれば、出資してくれる人を会社員時代に見つけられると最高です。
あるいは、収入が入り続ける状態にもっていく。具体的には、株式投資、不動産投資、コンサル、ブログやSNS(会員制交流サイト)などのストック収入などでしょうか。
理想的な目安は、何もしなくても月収20万円が入る状態。これは、僕の経験からの数値ですが、月収20万円くらいあるとどうにかなりますし、安心もできます。
ですから『金を生むカネ』『金を生まないカネ』を会社員のうちから分けて考えるといいです。生活にかかる分は仕方ないとして、余ったお金を原則『金を生む何か』に使うようにしたいです。その積み重ねで、ストック収入をつくっていく。
ストック収入は、何でもいいんです。目の前の何かを一生懸命やっているうちに出会いがあり、チャンスが生まれます。
サッカーでも将棋でも、ゲームは何でも動かないとチャンスが生まれません。そのきっかけになりさえすれば本当に何でもいい。一歩前に踏み出してみてほしいですね」(三浦)
アーリーリタイアは「幸せ」か?
最後に、そもそも論を聞いてみた。会社員生活を早々におさらば(アーリーリタイア)し、自分のやりたいことを追求する人生は本当に幸せなのか。
「もっと自分らしい、自分に向いた何かがある」と適職幻想をあおられているだけで、会社を辞めたところで本当に幸せになれるのか。言い換えると、仕事や働き方を変えただけで人は幸せになれるのか。三浦さんに意見をもらった
「幸せになれます。そもそも、アーリーリタイアを考えている人は、その時点で、アーリーリタイアしたいのです。
その本音を阻む大きな要因は、お金や将来への不安ではないでしょうか。しかし実際、生活はなんとかなります。
やりたいことは、何歳になってもやれなくはないですが、年を取るほど厳しくなってきます。
状況が整った時には健康に不安があったり、人と出会う機会が減ったり、仕事や将来に経験が生かせなくなっていたりと、どんどんやりにくくなってしまいます。今より若い時はありません。
NHK連続テレビ小説〈らんまん〉でも重要な人物として登場したジョン万次郎がこう言っていました。
『人の一生は短い。後悔はせんように』と。今、やりたいことをやった先に将来があります。後悔しないよう勇気を持って進んでください」(三浦)
アーリーリタイアに成功し、億万長者になった人のアドバイスは説得力がある。
[取材協力]
三浦純健(みうらじゅんけん)
株式会社カイリゾート代表。国内では、ホテル20軒、教育業、ECビジネスなど12社を経営。バリ島では、不動産事業を行っている。投資では、ホテル、貸ビル、駐車場、太陽光発電、バリ島のヴィラなど複数の不動産を所有し、株式やFX、事業投資の経験も豊富。将来は、数え切れない失敗をしながら復活した経験をもとに、若者の起業や事業再生のお手伝い、子どものための事業をやりたいと考えている。
[取材・文/一ノ瀬聡子]