見過ごしてるかも!医師が教える熱中症につながる脱水症リスクを判断するテクニック
これから本格的に暑くなる8月。熱中症予防は欠かせないが、特にリスクを高める脱水症を極力、予防するにはどうすれば良いだろうか。
実は脱水症とは関係がないように思える症状でも、大量の発汗や水分摂取不足からリスクが潜んでいることもあるといわれる。なんとなくだるい、疲れる、胃腸の調子が悪い、気分が悪いという場合は注意が必要だ。今回は、脱水症や熱中症に詳しい医師の谷口 英喜氏に症状の見極め方と対処法を聞いた。
意外と見過ごしがちな脱水症の可能性のある症状
熱中症にもつながるといわれる脱水症には、どのような症状があるのだろうか。
「成人の身体は、体重の6割が水分で占められています。その中でも、脳・消化器(胃・腸)・筋肉の3つの臓器は水分含有量が8割近くであるため、水分不足になると脱水症の症状が出現しやすくなります。脱水症を発見する目安は3つの臓器の異常症状の同時出現にあります。また疲れや痛みも脱水症のサインです」
具体的には、どんな症状が考えられるのだろうか。主に次の症状が出ると、脱水症が疑われるという。
1.集中力・記憶力・認知機能の低下
「脳に脱水症が起こると、中枢神経の異常が生じます。若い人では集中力の低下、高齢者だとせん妄症状や記憶力や認知機能が低下します」
2.膀胱炎、腎盂腎炎を繰り返す
「膀胱炎や腎盂腎炎などの尿路感染症を繰り返すことも疑われます。例えば、介護者のおむつ交換の負担を軽減するために水分投与を控えたら、結果として尿路感染症を繰り返し発症するようになってしまったケースでは、脱水症を起こしている可能性があります」
3.運動時のパフォーマンス低下
「脱水症により、脳の血流が減少して集中力が低下したり、筋肉の血流が減少して、筋力の低下や動きが緩慢になったりします」
4.原因不明の微熱や痛み
「脱水症は痛みを出現させたり、憎悪させたりもします。脱水症を治療すれば鎮痛剤を使用することなく、水分補給によって痛みの治療ができる可能性もあります」
脱水症が原因の症状かどうかを判断する目安
しかし素人が一人で判断するのはむずかしい。脱水症なのか、他の原因で体調が悪いのかはわかりにくいからだ。そんなとき、こんな方法で判断できることもあるという。
「試しに経口補水液を飲んでみるという方法があります。 経口補水液は小腸から、もっとも水分が吸収されやすい割合で水・塩分・糖分が配合されている飲料で、摂った水・塩分が素早く身体に吸収され、脱水症を改善してくれます。
経口補水液を飲んでほどなくして症状が改善したら、脱水症による体調不良であった可能性が非常に高いといえます。 気温が上がり脱水しがちな盛夏は、熱中症対策としても有効な経口補水液を自宅に備えておくのが良いでしょう。 一方、経口補水液を飲んでも体調不良が緩和されないときは、他の原因である可能性もあります。その場合は病院に行ってください」
経口補水液は、自宅で自分でつくることもできるが、「OS-1」など市販品を利用するのも良いそうだ。
塩分の摂取も欠かさずに
ところで、脱水状態にあるときには水分だけが足りないイメージがあるが、大きなご回答だという。
「水だけを補給しても、脱水状態を解消することはできません。脱水状態は水だけが不足しているのではなく、塩分も同時に失われた状態です。脱水時に水だけを飲むと一時的に血液が薄まり、身体は水と塩分のバランスを調整しようとして水分の排泄が進み、かえって脱水状態を進行させることにもなりかねません。脱水症は、水だけでなく塩分も不足しているリスクがあることを意識して、しっかりと適量の塩分も摂りましょう」
熱中症リスクを高める脱水症は、誰でも起き得ることだ。何らかの症状が出たなら、脱水症の可能性も検討しよう。
また谷口氏の著書「いのちを守る水分補給~熱中症・脱水症はこうして防ぐ」では水分補給の大切さや方法が詳しく紹介されている。合わせて参照しよう。
<取材・文/一ノ瀬聡子>
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【取材協力】
谷口 英喜氏
済生会横浜市東部病院 患者支援センター長/周術期支援センター長/栄養部部長 医師
専門は麻酔・集中治療、経口補水療法、体液管理、臨床栄養、周術期体液・栄養管理など。日本麻酔 学会指導医、日本集中治療医学会専門医、日本救急医学会専門医、日本外科代謝栄養学会指導医、TNT- D メディカルアドバイザー。1991 年、福島県立医科大学医学部卒業。学位論文は「経口補水療法を 応用した術前体液管理に関する研究」。著書『いのちを守る水分補給~熱中症・脱水症はこうして防ぐ』(評言社)ほか多数。