“和菓子の危機”に活路を。タイで挑戦する老舗和菓子店、人気の理由は「映え意識」
タイの若者にウケる「映え和菓子」
だが、なぜ巌邑堂の和菓子はタイの若者に支持されるのだろうか。その一手は、味わいのローカライズだけでなく、SNS大国のタイで「映え」に注力したことだ。
「タイの方の好みに合わせ、より華やかでポップな色味やデザインの和菓子を作り、SNSにアップしています」
高谷さんのみずみずしい感性で生み出される多彩な練り切りは、タイの若者の心をくすぐる。あんこも「優しい甘さがちょうど良い」と評判を呼んでいる。2023年の元旦、干支のウサギをモチーフにした練り切りを購入したタイ人女性は、インスタグラムに「かわいすぎて食べられない」と投稿した。
「健康スイーツ」としての切り口も
健康志向が高まるタイで、今後は「健康スイーツ」としての和菓子PRも検討中だという。
「和菓子は洋菓子に比べて脂質が少なく、小豆は栄養も豊富です。健康ブームに波乗りして需要拡大を狙う余地はあると思います」
一方で高谷さんは、「まずは正統な和菓子文化をきちんと伝えたい」と話す。
「ビジネスでの成功はもちろん、 日本の伝統文化を輸出する責任の重さも感じています。タイでは変にアレンジされた和菓子も見かけるので、SNSなどで正しい知識を発信しながら、受け入れられやすいポップさと伝統的な保守の部分とのバランスを大切にしています」