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“和菓子の危機”に活路を。タイで挑戦する老舗和菓子店、人気の理由は「映え意識」

ビジネス

厳しい現実「あんこはいらない」

 現地スタッフ5名とゼロから始めたタイ事業。当時は和菓子の認知がほとんどなく、「小豆あん」に馴染んでもらうのも一苦労だった。

「甘い豆ペーストを使った菓子文化はタイにもあるんですが、小豆あんに抵抗を抱くタイの方が想像以上に多くて。『あんこはいらない』『クリームにして』といった要望が続出しました

巌邑堂

どら焼きを作る様子

「現地の人が普段口にするもので作ったほうが馴染むのでは?」という社長の助言を受け、タイで流通する材料を組み合わせ、日本の味に寄せる試行錯誤を重ねた。

「和菓子作りで一般的な白双糖や上白糖がタイでは入手しづらく、グラニュー糖で代用したり、ココナッツシュガーを混ぜたり……。納得のいく味になるまで何度失敗したかわかりません(笑)

コロナ禍のピンチをチャンスに

 2020年3月。ようやく事業が軌道に乗ってきた矢先に、コロナ禍でのロックダウン。営業ができず窮地に立たされた。

売り上げゼロでもスタッフの給料は必要だし、当時はかなりキツかったです。オンライン販売も始めてなんとか踏ん張りましたね」

巌邑堂

練り切りを作る様子

 コロナ禍が追い風になったこともある。鎖国状態のなか、親日のタイでは「リアルジャパンを感じたい」という欲求が加速し、日本関連のイベントが多数開催された

「出店で巌邑堂の認知をグッと広めることができました。資金力がある企業の参入前に基盤作りができたのも良かったです」

 飲食店やホテルなどの法人顧客も獲得し、徐々に売り上げは回復に向かった。4年経った今、タイの若者を中心に巌邑堂の和菓子ファンは増え、高谷さんにレシピを教わり販売するタイ人が現れるほどに。巌邑堂は、和菓子文化を現地に根付かせる立役者になった。

巌邑堂

笑顔でどら焼きを手にするタイ人女性

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