『silent』見逃し配信も話題のTVer、なぜ“伸び悩み時期”を突破できたか
コロナ禍の巣籠もりが追い風に
2020年からのコロナ禍では、ユーザーの視聴行動やニーズがどのように変化したのだろうか。中島氏は「巣篭もり需要が追い風になった」と説明する。
「リモートワークが浸透したことで、可処分時間が増えました。その結果、TVerのユーザー数や視聴分数が伸びたのが大きな変化だったと思っています。それから、閉塞感の漂うなかにおいて、お笑いやバラエティが求められるようになっており、直近では数値的に見ても人気ドラマとバラエティが肉薄するような結果が出ています。そのほか、デバイス別の再⽣割合を分析すると、コネクテッドTVの割合が全体のおよそ3割を占めるように変わってきています」
また、2022年4月から始めた「リアルタイム視聴」は「自宅にテレビを持たない層に対してリアルタイムでの新たな接点を作りたい」という放送局側からのリクエストで実装した機能だ。
リアルタイム配信と“タイパ”視聴
「これまで、見逃し配信のオンデマンドコンテンツが主流でしたが、さらなるユーザー拡大に向けてリアルタイムでの配信コンテンツを導入しました。当初は、通勤・通学などのスキマ時間での視聴が増えると予測していましたが、機能をリリースしてから分析してみると、思った以上に自宅でリアルタイム配信を視聴するユーザーが多かったんです。
家にTVはあるけれど、家族とは別の番組を観たい。あるいは寝る前にベッドで横になりながら、好きなテレビ番組を視聴したいなど、オケージョンの多様化が顕著になりました。加えて、ユーザーの割合は新規が多く、サービスの入り口としてうまく作用していると感じています」
さらに、新たなTVerの活用方法として“タイパ”視聴が生まれているという。
「Z世代から30代、40代までと幅広い年齢層で、タイムパフォーマンスを意識した“タイパ”視聴を取り入れるユーザーが増えてきています。ドラマで言えば、話の大筋を掴むまでは通常の速度で視聴し、流れがわかったら1.5倍や1.75倍などにして視聴する。他方でバラエティ番組は間が大事ゆえ、倍速はあえて使わないなど、ユーザーによって視聴動向が異なるのも特徴になっています。SNSや動画配信があふれており、時間が限られているなかで、いかに効率よく見たいコンテンツを消化できるかが求められていると感じています」