『silent』見逃し配信も話題のTVer、なぜ“伸び悩み時期”を突破できたか
交渉を重ねたコンテンツを拡充
「運営側もこのスピード感(20日間で100万ダウンロード)には驚かされました」と中島氏は話す。
「インターネットの高速化に伴い、スマホでの動画視聴がスタンダードになった時代の流れが大きな理由のひとつになっていると捉えています。“テレビを見るならTVer”というポジショニングを当初からやっていたのも、ダウンロード数の増加に寄与したと考えています」
その一方、「TVerをダウンロードしたが、深夜番組しか配信されていない」「ゴールデンタイムや人気番組のコンテンツがない」といったユーザーの声もあり、番組コンテンツの拡充が求められていた。だが、地上波放送における視聴層の毀損やテレビ番組の複雑な権利関係などの事情で、一気にラインナップを増やすのは現実的ではなかったという。
「テレビ業界は基本的に1クール(3か月)ごとに番組改編が起こるわけですが、継続して権利者団体と向き合い、インターネット配信の基礎からビジネスモデルの説明、TVerの目的、見逃し配信の利点まで権利者の理解を得られるように地道な交渉を続けました」
ローカル番組の新たな需要を喚起
立ち上げ当初は在京、在阪の5局のみだったが、キー局経由で地方のローカル番組も配信が可能になると、ローカル番組の需要が顕在化した。ローカル局のバラエティ番組は、タレントの意外な一面が垣間見れるとあって、ファンや推しの間で注目されるようになったのだ。
「例を挙げると、さんいん中央テレビで放送している『かまいたちの掟』という番組があるのですが、お笑い芸人のかまいたちさんが自然体で振る舞っていて、普段は見られない面白さを楽しめます。自分の住んでいる地域では見られないからこそ、ローカル局ならではの手作り感や魅力に気づけるのが、人気が高まっている背景にあると考えています」
このような積み重ねが功を奏し、TVerは確実に認知度を上げながら、成長の軌道に乗ることができたといえよう。