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豊臣秀吉の「一夜城」は本当か?現代の技術でも不可能な“歴史の真偽”を検証

コラム

全長3キロの巨大堤防が実は…

 秀吉と秀吉の軍師・黒田官兵衛は考えます。そして、周辺の地理とこのときの気象を頭に詰め込み、答えを弾き出すんですね。「あ、水だ」と。盆地に城があって、近くに川(足守川)があって、今は梅雨時じゃないか。足守川の水をせき止める大きな堤防を造れば、降り続く雨も手伝って城の周辺を水浸しにできる。備中高松城は陸の孤島と化す……。

 なんともまぁスケールのデカい作戦を思いつくわけです。作戦は即座に決行され、堤防造りが始まります。大量の人夫に大量の報酬を与えた結果全長約3キロ、高さ約7メートルの巨大な堤防が、なんとたったの12日間で完成したのでした

 一瞬にして出来上がった長堤は効果てき面。秀吉たちの目論見どおり、水は城内にまで浸水し、援軍に駆けつけた毛利氏当主・毛利輝元や、叔父の吉川元春、小早川隆景らも一切の手出しができません。こうして備中高松城は「水攻め」によって攻略されました

現代の技術でも「絶対無理」

高松城水攻め史跡公園

高松城水攻め史跡公園

 高さ7メートルと言えばマンションの2階以上だし、長さ3キロと言えば、もう3キロですからね。短期間にこれだけのものを造るなんて「秀吉はやっぱり半端ないなぁ」と思ったのですが、どうやらこんなに大きくなかったみたいです、堤防。

 これだけの土やら砂やらを運び込もうと思ったら恐ろしいほどのトラックが必要らしく、現代でも“12日間”で仕上げるなんてちょっと厳しい。というか絶対無理、と言われているんです

 さらに、これまであたかも秀吉がゼロから造り出したかのように語られてきた堤防ですが、その場所にはすでに天然でできた自然堤防が存在していて、水を食い止める役目を果たしていたと言います

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