石川県の「人気ラーメンチェーン」がタイ進出30周年。成功要因は“サイドメニュー”に
世界的な日本食ブームが続くなか、タイでも多くの日系外食企業がビジネスチャンスを求めて進出し、しのぎを削っている。2021年12月にジェトロが公表した「2021年度タイ国日本食レストラン調査」によると、タイにある日本食レストランの数は4370店舗で、コロナ禍にも関わらず前年度調査から6.7%増加していた。
なかでも競合がひしめくラーメン業界で、圧倒的な店舗数と揺るぎない地位を築いているのが、石川県に本社を置く「8番らーめん」だ。1992年にタイに進出してから順調に業績を伸ばし続け、いまやタイ全土に100店舗以上を展開している。
今年でタイ進出30周年を迎えた同社は、なぜ現地で愛され続けるのだろうか。人気メニューの実食レポや本社への取材をもとに、その理由に迫る(※情報は取材時11月22日時点。1タイバーツ=約3.9円として換算)。
地方の外食チェーンがタイで店舗展開
石川県発祥の「8番らーめん」は1967年創業で、株式会社ハチバンが経営する老舗ラーメンチェーン店だ。加賀市の国道8号沿いに1号店がオープンしたことから、その名が付いた。2022年11月現在、日本国内では北陸地方を中心に115店舗を展開している。
一方、タイの店舗運営を担うのは、ハチバンとフランチャイズ契約を結んだタイ企業のタイハチバン。首都バンコクをはじめ、タイ全土に149店舗を展開しており、日本国内の店舗数を大きく上回っている。
特筆すべきは、地方の外食チェーン店が東京などの大都市圏に1店舗も進出せずして、タイで驚異の躍進を遂げていることだろう。
筆者のタイ人の友人3名(全員20代女性)に同社の印象について尋ねたところ、皆が口を揃えて「ハチバンは安くて美味しい」と回答。うち2人はタイ発祥のラーメン店だと勘違いしており、いかに現地に深く根付いているかが分かる。
8番らーめんのタイ1号店に行ってみた
8番らーめんの店舗は、首都バンコクの繫華街にあるバンランプー店を除く全店が、ショッピングセンターのテナントとして出店している。バンコク屈指のオフィス街、シーロム地区有数の商業施設「シーロム・コンプレックス」の地下一階に佇むのが、1992年にオープンしたタイ1号店だ。
午後12時半に訪れると、昼時ということもあり満席。順番待ちするほどの繁盛ぶりである。
涼しく清潔に保たれた店内では、タイ人スタッフがキビキビと各テーブルのオーダーをとり、料理を運んでいる。客層は学生やビジネスマン、親子連れなど幅広く、女性ひとりでも入店しやすい雰囲気だ。