優秀な人ほど要注意。ドラッグや酒に逃げて「病みやすい人」の特徴
デメリット③生産性を上げれば上げるほど忙しくなる
「ギリシャ神話に登場するヒドラは、頭をひとつ切り落とすと、続けてふたつめが生えてくる。同じように、私たちがより多くの仕事をこなすと、より忙しくなる」
組織心理学者のトニー・クラブは、生産性の追求がもたらす罠についてこうコメントしています。いかに生産性を上げようが、そのぶんだけやるべき作業の量も増えていき、あなたの忙しさは一向に改善しないという指摘です。
この言葉の正しさは複数のデータで認められており、たとえばリーダーシップIQ社が行った調査では、全米207社で働く従業員のエンゲージメントと業績評価データのマッチングを実施。その結果、全体の42%の組織において、生産性が高い人ほどエンゲージメントが低い事実をあきらかにしました。
つまり、仕事がたくさんできる人ほど作業のモチベーションが低く、自分が所属する組織にネガティブな感情を持ちやすかったのです。
仕事ができる人ほどネガティブな感情を持つワケ
理由を説明しましょう。あなたは、誰かに仕事の手伝いを頼みたいときに、どのような人に助けを求めるでしょうか? そう聞かれれば、誰でもスキルがない同僚より、能力が高い人にお願いしたいと思うでしょう。
そして、普通に考えれば、これと同じ心理はほかの従業員にも働くはずです。あなた以外の人も優秀な人間に声をかけ、また別の人も優秀な人間に頼り……といった事態が積み重なれば、さしものハイパフォーマーも音を上げるでしょう。
かくして優秀な人間ほどモチベーションを失い、会社への嫌な感情も増えていくわけです。ちなみに、もしあなたがハイパフォーマーでなかったとしても、似たような現象が起きる可能性はあります。
たとえば、あなたが1日にメッセージを送る量を増やせば、そのぶんだけ相手からの返信にリターンする義務は増えるでしょう。同じように、効率よく書類を仕上げればそのぶんだけ次の仕事は前倒しになりやすく、プレゼンの資料を読めば読むほど他にもチェックすべきデータの存在に気づくこともよくあるはずです。
仕事のプロセスが複雑化した現代では、作業に明確な終わりがないケースのほうが多く、いかに作業の効率を高めてもタスクの総量が減らないほうが一般的でしょう。
<TEXT/科学ジャーナリスト 鈴木祐>