“地球温暖化”の専門家が生んだ超巨大「脱炭素ビジネス」の裏側
どこよりも「脱炭素」を熱心に推進した国は?
しかも「環境を守る」とか「地球を守る」といった美しいお題目があれば人々の同意を得られやすい。また、ハンセンのように「このまま放置すると大変なことになる」と脅すことだってできる。もしも異を唱える人がいれば「お前は地球がどうなってもいいのか?」と糾弾するのも簡単だ。
こうして「地球温暖化を阻止するためにCO2を減らす」ことが、人類の使命とか責任であるかのように思い込んだ「心ある人たち」の支持を得て、超がつくほど巨大な「脱炭素ビジネス」マーケットは見事につくられていったのである。
CO2削減というキャンペーンに、どこよりも熱心だったのがEU諸国で、環境先進国などと呼ばれたりもしているけれど、彼らにとって、CO2を悪者にする「人為的地球温暖化説」は非常に都合がよかったのだと思う。なぜなら、ヨーロッパはもともと化石燃料の埋蔵量が少ないからだ。
化石燃料の埋蔵量が少ないEU諸国
2018年の統計では、石炭の可採埋蔵量の上位には、アメリカ(23.7%)、ロシア(15.2%)、オーストラリア(14.0%)、中国(13.2%)、インド(9.6%)であり、ヨーロッパでは、一番多いドイツでさえ、3.4%しかない。石油はさらに少なく、ヨーロッパの国を全部合わせても、世界全体のたった0.8%である。
つまり、化石燃料が主流であるうちは、化石燃料の埋蔵量が豊富な国に対して経済的な勝ち目はないのがEUの泣きどころなのだ。けれども、CO2を悪者にして、化石燃料をエネルギーの供給源から締め出してしまえば、ほかの大国とも対等な立場に立てる可能性があるわけで、それなら自分たちがおいてきぼりを食わずに済む、と考えたとしても不思議ではない。
だから、再生可能エネルギーに力点を移し、徐々に化石燃料を締め出す政策を、国連などに働きかけて強硬に進めようとしていたわけだ。
<TEXT/池田清彦(生物学者)>