防大卒エリートが挫折…「何者でもない自分」を受け入れた私に起きた心の変化
もはや「自分が何をしたいのかわからない」状態
そうした中でも私は文章を書くことやPR広報が得意だったので、広報幹部(リクルーター)、もしくは部内のカウンセリングを専門に行う心理幹部になれればいいなと思っていました。しかし、結局そうした専門的な業務をしたければ昇任試験を突破する必要がありました。
とはいえ、奇跡的に昇任試験を合格しても、そうした補職に必ず就けるという保障はなく、たとえ就けたとしても数年間のみという可能性もあります。それが幹部自衛官としての私の宿命でした。つまり、「幹部自衛官としての身分はあるが、自分の理想とはほど遠く、出世しそうにない」というのが私の悩みでした。さらに言ってしまえば、「もはや自分が何をしたいのかさえわからない状態」だったのです。
この悩みに対して「別に出世しなくても、そこそこ頑張ればいいじゃない」「それはあなたの努力不足」という指摘も頂きましたが、そうした紋切り型のアドバイスは何の解決にもならないどころか、やや聞き飽きていました。
そこそこ頑張ったところで、「出世しないと組織に居づらいのではないか」と当時の私は思い始めていたからです。自衛隊はやはり序列が明確になる組織です。昇任試験にパスできなくては、同期だけではなく後輩にどんどん抜かれていきます。
「向いていない」と考えながら頑張る息苦しさ
そうすると部下隊員から「仕事ができない人」と言われ、出世した後輩からは「扱いにくい防大卒のおじさん幹部」と言われることも珍しくありませんでした。そうした中でも「自分の好きなことだから!」と思えればよかったのですが、私は幹部自衛官として苦手なことが多く、徐々に息苦しさも感じるようになってきたのです。
残念ながら私は「防大卒の幹部自衛官」という理想を描きながら、「出世できそうにない」「自分が苦手なことをなんとかこなしている」、でも「これが自分の人生だ」と様々な思い込みに縛られ、無気力になってしまったのです。
20代後半から始まる人生の悩みを「ハーフライフ・クライシス」と言います。私は見事にハーフライフ・クライシスとなり、様々な肩書きや立場にがんじがらめになっていたのです。そこで、私は自分の生き方を考えることにしました。