同僚に嫌われたくない、仕事を頼めない…「職場の悩み」を精神科医に聞く
「嫌い」を肯定してみよう
さて、ここからは井上氏が産業医としてよく相談を受ける職場での悩みを2つ挙げてもらい、その対処法を教えてもらった。1つ目が、「嫌われるのが怖くて人を嫌いになれない」という悩みだ。
「まだ仕事に慣れておらず、貢献ができている実感がない状態だと、自分に自信を持ちづらいので、『自分は周りに迷惑をかけているのではないか?』と不安になってしまいます。その不安や恐怖から『周りから嫌われているんじゃないか』と考えるようになっていきます。
このような人は、同僚や上司に気が合わない人がいたときに『自分がもっとできるようにならないとダメなんだ』と気負ってしまって、相手を嫌いになることに対して過剰なブレーキをかけています。
もしこのような状態になってしまっているなら、自分のなかにある『嫌い』や『気が合わない』という素直な気持ちを肯定してください。無理をして感情を抑え込む必要もありません。『自分もAさんのことが嫌いなんだから』と受けれることで、『自分も周りから嫌われることもあるよなぁ』と周りから嫌われることに対する不安などが軽減できるのでしょう」
頼む時はテンプレートを使う
2つ目は、「周りに仕事を頼むことができない」という悩みが多いそうだ。
「自分には手に負えない仕事に直面したときに、周りの人にお願いしたいものの、緊張して気軽に頼めなかったりしませんか。こういう人は『周りに迷惑をかけてしまうのではないか』という思いが強く、誰かに仕事をお願いできずに、自分ですべて抱え込んでしまうのです。人にお願いをするときには、ある程度、自分のなかでテンプレートを作っておくと楽に依頼ができます。
例えば、次の3つのステップでお願いしてみてください。1ステップ目は声かけです。『あの、お願いがあるのですが……』という声かけは、相手も身構えるので適切ではありません。最初は、『Aさん、相談があるのですが』というように、名前を呼び、『相談』という表現を使うと良いでしょう。
2ステップ目は理由です。お願いしたい理由をしっかり述べましょう。『時間が取れない』や『難易度が高すぎる』などです。理由を述べた上で、仕事を代わってもらえないか、手伝ってもらえないかなどの相談をしてください。
3ステップ目は感謝です。最後は『ありがとうございました』という感謝の言葉で締めてください。引き受けてもらったときは当然ですが、断られたときにも『話を聞いてもらってありがとうございました』という気持ちを伝えましょう。すると、次の機会に手伝ってもらえる可能性が高くなります」