体操界は他人事じゃない「職場のパワハラ」受けた人の率は異常に高い
柔道界はこのような数々の改革によって、リオ五輪では男女合わせて12個のメダルを獲得することができたのです。
大切なことは当事者だけに責任を負わせて幕引きとするのではなく、組織の構造的な問題と捉えることです。そのことを意識して改革に乗り出さなければ、根本的な解消はされません。
サラリーマンの3人に1人がパワハラを受けた経験
体操だけに留まらず、レスリングやアメフトなどスポーツ界では不祥事の発覚が相次いでいますが、企業でのパワハラの実態はどのように推移しているでしょうか?
厚生労働省は平成24年度と、平成28年度に「職場のパワーハラスメントに関する実態調査」を行っています。それによると、過去3年間にパワーハラスメントを受けた経験があると回答した比率は、平成28年度は32.5%となっており、平成24年度の25.3%よりも増加していました(全国の企業に勤務する20~64歳の男女10000名にインターネット調査、平成24年は9000名)。
およそ3人に1人がパワハラを受けた経験がある計算になり、その数は多いと言わざるを得ません。しかしこれは、「パワーハラスメントに対する関心が高まった結果が増加の理由のひとつと考えられる」と、この調査では結論づけています。
また、パワハラの予防・解決のための取り組みを実施していると回答した企業の比率は52.2%となっており、前回の調査結果の45.4%よりも上昇していることが見て取れます。
ここ数年でパワハラへの意識が大きく変化し、今までは指導の範疇とされていたものも許されなくなっています。きちんと対策をとって取り組めば、社会は必ず変化するのです。
また、パワハラ予防・解決のための取り組みを進めた結果、「職場環境が変わる」「休職者・離職者の減少」や「メンタルヘルス不調者の減少」などの付随効果がみらるとも。この取り組み自体が社会にとって良い影響を与えているのです。
これをきっかけに膿を出し切ってとの声
ネットでは、スポーツ界ではこのようなパワハラ事例が蔓延しているとの指摘が多くあり、社会的な問題として捉えて、一掃してほしいとの声が少なくありませんでした。
「スポーツ界ではパワハラが横行している。少しずつ表面化しているだけ」
「東京オリンピックをきっかけにして、このようなことは一掃してほしい」
かつては、スポーツ界はもちろんのこと社会全体において、かつては「指導」として許容されていたハラスメント的なコーチングも、現在では許されない行為となっています。
これは、事態を告発した宮川選手を始め、勇気を持って声を上げた人たちによって作られた流れです。私たちにできることは、声を上げた人たちを応援し、守ることと言えるでしょう。
<TEXT/湯浅肇>