なぜ新卒に「初任給40万円」を払うのか?社長に聞いた、意外なメリット
「こんな初任給、見たことがない」「こんなにもらっていいのか……?」。入社説明会でそんな声が多く挙がる企業が人事領域に特化したITコンサルティング事業を営む株式会社オデッセイだ。
なんと初任給は大卒で約40万円で、いきなり「それなりの生活」ができてしまう額だろう。なぜ若葉マークがついた新卒社員に高い給料を払うのか、その考えの背後にある思いとは? 同社の代表取締役社長の秋葉尊氏を直撃し、さらに千葉商科大学准教授で働き方評論家の常見陽平氏に解説を求めた。
1年目でいきなり年収480万円に
オデッセイは、本社が千代田区霞が関にある、従業員数約30名の企業だ。新卒初任給は、大学卒で400,800円、大学院卒で410,200円。単純計算で12か月分の給与はそれぞれ約480万円と約494万円になる(同社は年俸制)。若手社員の賃金の平均額と比べてみると違いは歴然。厚生労働省の「令和3年賃金構造基本統計調査」における20~24歳の賃金において、大学卒は約229万円、大学院卒は約245万円だ。
オデッセイが採用するコンサルタントという職種は一般的に高給の傾向があるが、それにしても同年代の平均年収と比べて約2倍。高額な初任給を払うのはなぜか? 秋葉氏は次のように話す。
「当社は『仕事にやりがいを、人生に豊かさを』を社是として掲げており、経営の基本としています。社員が、毎日の仕事にやりがいを感じながら、経済的にも豊かになれるように会社として注力しています。また『お客様の満足度は社員環境満足度に比例する』と考えており、社員の働く環境への満足度が高まれば、モチベーションも高まって、お客様に満足いただける質の高いサービスの提供につながるはずだとも考えています」(秋葉氏、以下同)
中途の給与テーブルをスライドした設定
直接的な効果として、やはり採用には有利となっているようだ。少子高齢化が進み、売り手市場に転じている中でも、同社の新卒採用における採用率は、過去の平均で1/200(採用人数/エントリー数)、実に0.5%と高倍率。会社として求める人材を採用できているそうだ。この効果は、やはり初任給の高さも含めた「社員環境満足度の向上に力を入れていることが背景ではないか」と秋葉氏は分析する。
この初任給の額は、初めて新卒を採用した2008年から設定しているという。しかし、新卒だけに特別に設定しているわけではないという。
「実は新卒を採用していなかった2007年以前に使用していた、中途採用を基本とした給与テーブルから、少し下げたものに設定しています。社是に沿った経営を進めているため、給与テーブル全体が、一般的な企業の水準よりも若干高くなっているのかもしれません。新卒入社の社員にとっては、世間で高額といわれている初任給がスタートラインとなり、そこから年2回の評価で昇進・昇給していくことになります」