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給料は増えない、物価上昇…「急激な円安」の背景。何がまずい?どう対処すべきか

コラム

なぜ円安が進んでいるのか?

日本銀行

日本銀行本店 The central bank of Japan headquarters in Tokyo © Leonid Andronov | Dreamstime.com

 為替レートは通貨の需要と供給で決まります。円安になっているということは、日本円が必要とされなくなっている、あるいは他の通貨が必要とされていると言えます。米ドルの為替レートで考えると、アメリカドルの人気が高まり、円を売ってドルを買う人や金額が増えてくると、為替は円安に変化します。

 なぜ円を売ってドルを買う人が増えてくるのでしょう。いろいろな要因がありますが、大きな理由としては、アメリカ政府が金利を上げたことにあると考えられます。これにより、アメリカ全体の金利が上昇します。

 周辺の国に比べて金利が上昇すると、金利上昇した通貨の人気が高まり、相対的に金利の低い国の通貨の人気が薄まります。シンプルに考えると、アメリカでお金を預けたほうが、日本でお金を預けるより金利が高いため、パスポート不要のお金は日本からアメリカに旅立ってしまいます。これは、世界のお金のルールと言えます。アメリカの金利上昇に伴い、金利の上がらない日本円が売られたと言えるでしょう。

政府と日銀は円安に対応できるのか?

 今後、日本政府と日本銀行はどうすべきでしょう。まず、日本銀行の役目は物価を安定させることにあります。となると、物価上昇を抑えるためには日本のマイナス金利を解消させたり、金利を上げる金融政策を行う可能性が高まります。

 ところが金利を上昇させると、企業の借入金利や住宅ローン金利の上昇を招きかねないため、大反対が起こると考えられます。金利上昇と超低金利維持のパワーバランスで金利の動向が決まります。今までの日本政府の対応を見ていると、消費者である国民よりも、雇用側である企業を守る傾向があるように見えます。従って、円安はしばらく容認する可能性が高いです。

 一方で、参議院議員選挙が控えています。選挙で勝利するには国民からの支持を得る必要がありますから、選挙のタイミングで為替の誘導を匂わせて選挙終了まで一時しのぎの為替対策を行う可能性はありそうです。

 輸出企業の円安メリットと、低金利維持の各業界へのメリットを考えると、円高に戻すために金利を上げるという可能性は低そうに見えます。もっとも、読者のみなさんがネット上で声を上げ続けるなどすれば、政府や日本銀行も危機感を抱く可能性はありますが、危機感よりも現状維持を好むのではないかと筆者は考えます

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